研究課題/領域番号 |
21K18777
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邉 保真 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60736461)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 極超音速 / 相変化 / 極超音速機 / 着氷 |
研究実績の概要 |
令和3年度は主として極超音速気流中での水の凝縮に対する実験手法の確立、および、航空機を模したダイヤ型模型表面での着氷の基礎特性の解明を実施した。 航空機表面における着氷現象と、それに伴う機体形状の変化は航空機の空気力学的特性低下に大いに影響し安全性に直結する問題である。本研究では将来型宇宙輸送機・極超音速輸送機における機体表面での水の相変化と着氷に関する基礎研究を実施した。極超音速気流においては特に衝撃波による気流の加熱・昇圧と、膨張波を介した急速な冷却・減圧が極めて狭い領域で発生しうる。このような極超音速流れに特有な現象を加味した水の相変化を計測・解明するため、航空機の簡易形状としてダイヤ型模型を製作し、基礎実験としてその表面での水の相変化を調査した。東京大学柏極超音速高エンタルピー風洞において、マッハ数7.0・よどみ点温度約550 Kの気流中に頂角20度のダイヤ型模型を設置し、その表面に投入した液体の水が衝撃波・膨張波と干渉しつつ下流側で凝固し着氷となる様子を観測した。実験では水の相変化の直接の可視化とシュリーレン法による水・氷周囲での衝撃波生成を含む流れ場の可視化を実施した。これにより、水は機体表面を下流側に移流し膨張波を通過した直後から氷に変化し機体形状を大きく変えうることが示唆された。また、2年目以降に実施予定の解析による水の挙動予測のモデル化を一部前倒しで実施した。燃料タンク内の流体挙動予測などに用いられるCIP-LSM法を応用しダイヤ型模型表面における極超音速気流にさらされる水の下流側への移流について定性的に合う結果を得られた。実験と解析を通し、極超音速流れにおいては、当初予測された通り比較的狭い領域で急速な相変化が発生しうることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は概ね当初計画の通り実施できた。令和4年度は令和3年度までに確立した水の相変化に関する実験・計測手法と検証データを用い、主に解析モデルの確立の面から研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は高速気流中での着氷の条件予測と相変化の発生予測モデルの確立を目指して研究を進める。令和3年度までに水の相変化を極超音速気流中で観測する手法を確立できた。令和4年度はこれらを用いて得られる実験結果を比較対象として用い、水の挙動の予測モデルの確立とそれによる数値解析による挙動予測を中心に研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は水の相変化を観測する小型極超音速風洞装置を購入・製作する予定であったが、コロナの影響による世界的な材料供給網と運送への遅延により、装置の材料となる一部金属部品の納入が大きく遅延影響を受けた。次年度使用額は令和四年度早々に納入・完成予定である極超音速風洞装置の購入に予定通り充てる。 なお、水の相変化を観測実験自体は類似装置である東大柏風洞を用いることで、おおよそ計画通り実施できた。
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