航空機表面における着氷現象と,それに伴う機体形状の変化は,航空機の空気力学的特性に大いに影響し,推力・揚力の低下や安全性に直結する問題である.本研究では将来型宇宙往還機や極超音速旅客機における機体表面での水の相変化と着氷に関する基礎研究を実施した. 令和5年度は主に,極超音速気流内における着氷の融解,移流と,下流側での再凝固について,実験及び解析を通して現象の解明を進めた. 具体的には,昨年度までに実施した極超音速気流中での水の相変化に対する基礎特性の実験結果,および,航空機を模したダイヤ型模型表面周りでの着氷特性計測結果を予測するために構築した数値解析モデルを利用し,航空機で問題となりうる氷による形状変化の影響を受けやすい条件を探索した.極超音速機の簡略形状としてダイヤ型模型を製作し,その周りの流れにおいて形成される衝撃波・膨張波を伴う温度・圧力の急激な変化を伴う流れ場が,流れ場中の水の挙動と相変化に与える影響を計測調査した.マッハ数7.0,よどみ点温度約600Kの気流中に頂角20度のダイヤ型模型を設置し,表面の液体の水が高速流れによって発生した衝撃波・膨張波と干渉し着氷となる際の液滴・氷分布散乱光計測およびシュリーレン法により測定した.各相の水の挙動を解明するため,水蒸気については Navier-Stokes方程式に基づく空気と水の混合ガスとして解析を行い,水滴挙動は粒子法を応用した解析を,また,機体表層の液体については燃料タンク解析等に用いられるVOF法を応用し,水の挙動の定性的な解析を行なった.数値解析結果より,水の分布は実験結果と定性的に良い一致を示し,特に,温度が急速に低下する膨張波通過後の模型背後における低温領域での着氷の発生が示唆された.
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