研究課題/領域番号 |
21K18779
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杵淵 紀世志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90648502)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 極低温推進剤 / 液体水素 / 再使用宇宙輸送機 / 再突入 / 極超音速飛行 / トランスピレーション / 空力加熱 |
研究実績の概要 |
本研究では宇宙輸送機の完全再使用化に向け,極超音速飛翔や再突入の際に問題となる空力加熱に対し,軽量,高信頼性かつ再使用可能な冷却手法の実現を目的としている.そこで,従来の炭素系材料等の熱防護材に代えて,輸送機に推進剤として搭載される極低温液体を積極的に利用したマイクロ流路とトランスピレーションによる新たな機体冷却法を提案する.表面張力の卓越による蒸気膜成長や気泡停滞による熱伝達率の低下,気相部/液相部における流路設計の個別最適化が課題である.前者の課題は独自のマイクロジェット冷却を適用することで解決を図り,後者は従来の多孔質材ではなく積層造形により設計自由度を確保し流路設計の局所最適化を行う. 本研究を通じ,液体窒素を利用した実験による原理実証と有効性の判定を最終目的としている.今年度は計画通り極低温液体に代えて水を利用した実験に取り組み,無次元数に基づく相似則により極低温流体利用時の設計に必要なデータ取得を完了した.内部可視化が可能な透明樹脂模型と超音波流量計等からなる実験装置を新たに構築し,マイクロジェットと気相の干渉を明確に捉えることに成功した.可視化を通じマイクロジェット流速と表面張力の比であるWeber数が蒸気膜除去の可否を支配する重要なパラメータであることを明らかにした.また,浮力と表面張力の優劣を表すBond数も気泡の運動に対し重要であることを確認した.これらのデータを用いて液体窒素実験供試体及び実験装置の設計を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り水を用いた実験を通し,Weber数,Bond数といった無次元数と,気液二相流の可視化像の関係を整理し,極低温流体を用いた際の設計に必要なデータを取得した.液体窒素による実験に向けた供試体,装置設計を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
計画に基づき,令和4年度は液体窒素供試体及び実験装置の製作を行うとともに,数値流体解析の準備も進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
水実験装置の構築が学内共用インフラの整備により当初予測より低予算で実施できた.差額分は令和4年度に計画している液体窒素実験の一層のデータ拡充に充てる.
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