現在多くの分野において導入されつつあるAI・データサイエンスの手法は,複雑なシステムをモデル化,予測,制御する新たな方法を提供している.近年,月以遠の深宇宙探査が注目を集める中,特に起点となる月近傍領域への低エネルギー遷移軌道はその重要性を増している.バリスティックキャプチャ軌道についても多くの研究が報告されている.さらに,バリスティックキャプチャ軌道を用いた地球―月軌道の最適化も国内外で多く行われている.しかし,バリスティックキャプチャ軌道を含むカオス的な領域を含んだ軌道設計法は現象のメカニズムにおいていまだ未知の点が多い.また,機械学習によりカオス領域の軌道をモデル 化しようとする試みはあるものの,データ駆動モデリングによる試みは国内外でも例がない.宇宙機の多体力学系の運動は解析解がないため,軌道設計のための大規模な数値計算が行われておりデータサイエンスの応用が期待される.惑星に一時的に捕獲される現象はバリスティックキャプチャとよばれ,大気抵抗などを使わずに重力のみによって,惑星に最接近し,場合によっては惑星の周りを周回することができる.しかし,バリスティックキャプチャをはじめ,カオス的な領域を含んだ軌道設計法は現象のメカニズムにおいていまだ未知の点が多くモデル化が困難である.本年度は前年度までのデータ駆動解析と力学系解析から得られた知見を踏まえ,バリスティックキャプチャ軌道を特徴付ける力学系のindexについて検討を行いバリスティックキャプチャが起こるまでの時間とFTLEの関連について調べた.
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