本研究では,カーボンナノチューブの強度維持バンドル化を実現し,サイズアップを図るため,大別して2つの実験を行った.それぞれについて実績の概要を示す. (1) 単層カーボンナノチューブのバンドル化と強度評価 構造や直径を実測した2本の無欠陥単層カーボンナノチューブに対し,電子顕微鏡でマニピュレータを駆使して接近させてファンデルワールス力でバンドル化させることに成功した.このバンドル化したカーボンナノチューブをピックアップして自作のMEMSデバイスに設置し,引張試験を実施した.その結果,2本バンドルの場合,ヤング率および引張強度ともに1本の場合とほぼ同じ値(E=1TPa,σf=60GPa)を示した.これは,無欠陥単層カーボンナノチューブを欠陥を導入させることなくうまくバンドル化できれば,強度を維持しつつ,サイズアップを実現できる可能性を大いに含んでいることを示す最初の結果と考えられる. (2) 単層カーボンナノチューブバンドルの化学処理による高強度化 様々な化学処理を施した単層カーボンナノチューブバンドルを引張試験した.結果,ポリリン酸を用いて前処理し,塩化する本さんにより分散させた後にジアゾニウム塩によりフェニル基処理したサンプルが最も高強度であることがわかった.一方,分散処理を行わずにフェニル基処理を行ったサンプルは引張強度が向上しないことがわかった.また,ラマン分光法と引張試験を組み合わせ,引張負荷を与えながらラマン分析を行った.その結果,無処理,フェニル基処理のみ,分散処理のみのサンプルはG-bandの半値幅が最大の点で,分散+フェニル基処理のサンプルはG-band半値幅の最大位置から少しずれたところで破断が起きた.これは,分散処理により内部にまでフェニル基が侵入できるようになったことが関係していると考えられる.
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