研究課題
2023年度も北海道南部のしかべ間歇泉で多項目連続観測を継続して,噴出孔口元近傍における温度観測,空気振動,傾斜変動のデータの蓄積を進めた.前年度までの間歇泉観測で存在が明らかになった炭酸ガスの噴出に及ぼす影響については,炭酸ガスを含む地下水の帯水層内および上昇管内流れのシミュレータであるTOUGH2/ECO2Nを利用して定量的な検討を行った.しかべ間歇泉における2022年度までの成果および鬼首間歇泉での観測研究成果については,いずれも査読付き欧文誌に掲載済である.また,有珠山銀沼火口内の噴気地帯近傍で地下の温度分布と物質輸送の状態を調べるために,25cm,50cm,75cm,1m深地温探査および土壌サンプルの採取を実施した.噴気域近傍では噴気移流による熱輸送を示す温度分布が得られた一方で,離れた地域では伝導による熱輸送を示唆する温度分布となり,予想どおりの結果であった.噴気域近傍で採取した土壌サンプルからは,表層部には粒度の粗い火口壁の崩壊堆積物があり,深度数10cmには青緑色に変質した水分の多い粘土状の層が,それより下部には粒度の粗い青緑色の層が存在することが分かり,粘土状の層が地表への噴気の噴出を阻害していると推察された.研究期間全体の成果としては,周期的に熱輸送のモードが変化する間歇泉の噴出素過程についての理解が特に深まった.しかべ間歇泉では噴出中における噴出孔内の温度・圧力データが得られたことに加え,我々が知る限りでは世界初となる噴出中の孔内映像観測にも成功した.また数値実験では,炭酸ガスが含まれることで熱水の気化が促進され,純粋な水-水蒸気系よりも深部まで沸騰が進展することが明らかになった.さらに,管内の温泉水の鉛直温度勾配と噴出強度との関係が見いだされ,先行研究では議論されてこなかった噴出停止プロセスについての新しい知見が得られた.
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Journal of Volcanology and Geothermal Research
巻: 450 ページ: 108092~108092
10.1016/j.jvolgeores.2024.108092
巻: 440 ページ: 107851~107851
10.1016/j.jvolgeores.2023.107851