研究課題/領域番号 |
21K18786
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
盛川 仁 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (60273463)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 水晶振動子センサー / ジャイロ / 加速度計 / 絶対方位計 / 温度制御 |
研究実績の概要 |
既に実用化,製品化されている水晶振動子を用いたジャイロを恒温槽に入れて温度管理を可能とする装置を開発するために,温度が年間を通じてほぼ一定であるトンネル内にセンサーを設置し,温度変化に対するセンサー出力の感度特性について第一年度に引き続いて検討した。恒温槽を作成する前段階としてトンネル内でジャイロ本体を一定速度で回転させ,温度ドリフトの影響があるかどうかについて種々の回転速度で回転させた結果,一回転に要する時間はセンサーの温度ドリフトに対して十分に短く,恒温槽を製作することなく精度よく真北を同定できる可能性が極めて高いことを確認した。第一年度は半導体部品等の入手性の悪化にともない手持ちの機材を用いたバラックで実験を行ったが第二年度ではある程度完成形を想定した構成で試作を行った。またトンネル内では別途高精度ジャイロを用いて真北の方向を同定し試作機の精度検証を実施可能な環境を構築した。 また記録の解析アルゴリズムについても検討を進め,角速度及び並進加速度をそれぞれ1成分ずつ用いた場合に真北を同定する手法及びその際の問題点を明らかにした。すなわち,真北の同定には逐次最小自乗法のような比較的簡易な解析アルゴリズムを用いてジャイロセンサーの回転時の出力信号を逐次処理することで可能であることが明らかとなった。また,センサーの回転前の初期位置への依存性は小さいものの初期位置と基準方向のなす角を精確に測定しておくことが必要であり,そのための仕組みをジャイロセンサーとは独立してターンテーブルに実装することが必要であることがわかった。さらに,角速度および並進加速度をそれぞれ2成分または3成分使ったアルゴリズムの構築にあたっては絶対座標系に対するジャイロのローカル座標系の回転の順番に適切な配慮が必要となる可能性が示唆される結果が得られ,アルゴリズムのさらなる精査が必要であることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学内にあるトンネル内で実験を実施するため,新型コロナウィルスの影響を受けにくい。また,ある程度完成形を想定した構成で新たに試作機を作成した。また精度検証に必要な環境を整えたことで解析アルゴリズムの妥当性も確認可能となったことで,概ね予定通り進捗しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度までに,恒温槽は必ずしも必要ではないことが明らかとなった。そこで部品類の調達の遅れにより製作ができなかった回転テーブルを本格的に製作するとともに真北の精度評価を行う環境がととのったため,より実践的な環境でのデータ取得に向けて実験を実施する。また得られたデータから真北を同定するために3成分の角速度及び3成分の加速度の記録を同時に用いたアルゴリズムを精査したうえで実装し,観測記録を用いて精度の検証およびアルゴリズムの改善を行う。また,高精度加速度センサーおよび高精度角速度計との比較によりMEMSジャイロセンサー単体での精度を検証し,絶対方位について期待される推定精度を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体や種々の部品類の調達が世界的な規模で困難となり,第二年度において多少の改善はみられたものの多くのキーデバイスの調達に時間を要した。そのため必然的に予算の次年度使用が発生した。第三年度には第二年度に調達を進めていた部品類が納品される可能性が高いため,これによって部品の調達遅れと予算執行の遅れが解消されることが期待される。しかし,部品類の世界的な不足が解消しないことも考えられ,その場合には部品類の変更や設計の変更なども含めて,実現可能な計画となるよう軌道修正を行う予定である。
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