鉄鋼材料中で侵入型元素と置換型元素が局所的に濃化した溶質クラスタによる強化機構の解明を目的とし、窒化と水素焼鈍処理したFe-Ti合金の引張特性と微細組織を調査した。その結果、650℃以下の窒化材では一原子層のクラスターが支配的に生成し、高温ほどサイズが大きく、密度が高くなることが分かった。一方、窒化温度が700℃に上昇すると複数原子層厚さのTiNが生成し、密度は低下する。得られたクラスター・TiN分布からすべり面上の粒子間隔を評価して強化量を整理したところ、粒子抵抗力はOrowanモデルの予測を大きく下回ることから、Ti-Nクラスターはカッティング機構によって強化に寄与するものと考えられる。
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