研究実績の概要 |
本研究課題ではリチウムの挿入・脱離に伴う格子の膨張収縮に影響する因子について学術的な知見を深め、このような体積変化の抑制を実現する材料科学的方法論を確立することを目的として研究を遂行した。その学術的な成果を元に本質的に劣化しない高耐久性インサーション電極材料の創製を成し遂げることを目的として研究を遂行した。層状構造の材料では固体中から全てのリチウムを脱離させると、層間距離が大幅に減少し、結果として大きな体積変化と粒子の脆性破壊に繋がる。このような異方的な体積変化は層状材料に由来するものであることから、結晶のホスト構造としては三次元の立方晶系材料を利用する。また、Nb5+ や Ti4+ といった、d0 イオンを構造中に導入することで層状ではなく、立方晶系岩塩型構造を安定化させることに成功した。また、岩塩型構造を安定化させ、同時にLi 脱離時の構造安定性を高める d0 イオン (ニオブ, チタンなどのイオン)に加え、多電子レドックスを担う可動イオンであるV、また、他電子レドックスを担うが可動イオンとならないCoなどを用い、さらに、Liイオン過剰量を可変因子として材料設計を行った。これらの異なる特徴因子を持った材料の反応機構を比較検討することで、インサーション材料の膨張・収縮を制御するための学術的方法論の確立、また、これら成果を活用することで次世代の長寿命蓄電池の実現に繋がることが期待できる。
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