研究課題/領域番号 |
21K18818
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松永 克志 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20334310)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | 電子状態計算 / バイオセラミックス / 無機有機界面 |
研究実績の概要 |
人工骨や人工歯根のような生体代替材料開発において、リン酸カルシウム結晶と有機材料との複合化による材料機能発現が目指されている。そこでは、リン酸カルシウム結晶と有機分子が形成する界面の安定性やその起源となる界面相互作用様式が、重要な材料設計指針となる。しかしこれに関する電子・原子レベルからの知見はほとんどない。そこで本研究では、ジカルボン酸分子で修飾したリン酸八カルシウム(OCP)結晶に着目し、第一原理計算によりその熱力学的安定性を解明することを目的とした。具体的には以下の内容を実施した。 (1)OCPスーパーセルの構築:本研究では、OCP結晶をベースとしたスーパーセルを用いた。水和層にはHPO42-イオンが存在するため、これを置換した構造を検討した。ジカルボン酸としては、コハク酸(-OOC(CH2)2COO-)を主たる対象とし、スーパーセルの大きさの見積もりや、計算精度を調査した。さらに機械学習的手法も併用し、最安定構造の探索を試みた。ジカルボン酸導入後の結晶格子長さ等、既往の実験データとの比較検討から、計算結果の妥当性を確認することができた。 (2)第一原理熱力学計算による有機分子修飾の熱力学的安定性評価 上述の最安定構造とコハク酸導入前のOCPスーパーセルの全エネルギーを用いて、コハク酸修飾OCP結晶の熱力学的安定性を調べた。この際必要となる、構成イオン成分の化学ポテンシャル算出方法を確立することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ジカルボン酸分子としてコハク酸分子を主たる対象とし、各種第一原理計算条件の検証を行った。OCP結晶のような複雑な結晶構造に対する計算条件を決めることができたと考えている。また、熱力学的安定性の評価にあたり、有機分子の化学ポテンシャルを如何に算出するかが焦点であったが、陰溶媒モデルなどを用いることで、分子種や分子形状に関係なく算出が可能であることが判明した。コハク酸のみならず、他のジカルボン酸への本手法の適用性も確認できたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、コハク酸含有OCP結晶の最安定構造の決定に取り組み、既往の実験データとの比較検討から、計算結果の妥当性を検証する。また、他のジカルボン酸分子の検討も試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナによる影響で学会がオンライン開催となり、旅費が使用できなかった。次年度は、状況を見ながら、必要に応じて大型計算機使用料として使用し、研究成果をまとめていく予定である。
|