研究課題/領域番号 |
21K18824
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松田 厚範 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70295723)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 全固体電池 / 固体電解質 / リチウムイオン / ガラスファイバ / 極薄シート |
研究実績の概要 |
我々は、液相から硫化物系電解質を調製する有用な手法として独自の液相加振(Liquid-phase Shaking: LS)法を開発した。LS法は、有機溶媒中で出発原料をジルコニアボールと振とう処理することで硫化物系固体電解質を調製する方法である。このLS法による固体電解質合成の際に、電解質膜の補強材としてガラスファイバを添加してガラスファイバ/LPSI固体電解質複合体を調製したところ、絶縁物であるガラスファイバを添加しているにも関わらず得られた複合体がLPSI固体電解質と同等の非常に高い伝導性を示す現象を見出した。本研究課題では、以下の実施項目について取り組んでいる。 【実施項目:反応機構・ガラスファイバ/固体電解質界面構造解明】 出発材料であるLi2S、P2S5、LiIを3:1:1のモル比で秤量し、ジルコニアボールと共にプロピオン酸エチル(EP)中に加えた。振とう処理を行い、SiO2ファイバを振とう開始1時間後に添加した。得られたスラリーをシャーレにキャストし、減圧熱処理を行って、膜厚40~50μmのシートを作製した。X線回折(XRD)測定、室温における交流インピーダンス測定を行った。熱処理温度150℃以上でLi4PS4Iに起因するピーク、170℃以上で出発材料であるLiIに起因するピークが確認された。これらの結果から、温度の上昇に伴い結晶化が進行したことがわかった。 【実施項目:高伝導性・極薄電解質膜の作製と全固体電池特性評価】 熱処理温度の最適化を行った。その結果、150℃で熱処理したシートにおいて最も高い室温導電率が得られ、0.23 mS/cmとなった。脱溶媒とLiI結晶化低減が、高い導電率を達成するために重要因子であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Li7P2S8I系固体電解質においては、熱処理温度の最適化を行い、150℃で熱処理したシート(厚み40~50μm)において0.23 mS/cmの高い導電率(室温)が得られている。さらに、この電解質シートを用いた全固体電池の試作も行い、充放電を確認していることから、順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
前駆体の熱処理による結晶化挙動を、Ar雰囲気中熱分析と非暴露XRDを用いて、詳細に調べる。また、反応機構および前駆体の構造解析を、ラマン分光法、NMR法などにより行なう。特に、ガラスファイバと固体電解質の界面構造を、非暴露XRD、TEM観察、インピーダンス解析等により実施する。
シート化に関しては、ガラスファイバの形態(直径・ファイバ長)とLi2S-P2S5-LiI系を中心に種々の固体電解質組成の最適化を行う。さらに熱処理・機械プレス条件を検討することで高伝導性・極薄電解質膜の作製と全固体電池の試作を行う。全固体電池試作については、負極活物質にグラファイトもしくはシリコン、正極材料にはNiMnCo系酸化物等を用いて構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナ感染症の影響で旅費等が発生しなかった。2022年度は、旅費並びに人件費・謝金が必要になる。
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