研究実績の概要 |
本研究では,新学術・ミルフィーユ構造の材料科学では取り挙げられない,ラメラ以外の形態を有する複相合金に着目し,軟質相への応力集中,局所変形を意図的に誘導することで複相材料の力学高機能化を試みるべく検討を進めている. 本年度は,Mg, Alを母相としつつも組織として平滑なラメラ組織が発達しない共晶合金,具体的にはAl-Ce, Al-Y, Al-Si, Al-Mg-Si, Al-Ge, Al-Mg-Zn, Mg-Li, Mg-Sn, Mg-Cuといった合金系に着目し,ブリッジマン法による一方向性凝固組織制御を行った.この結果,合金種に依存し,成長方向に対し方向性を有するものの,ロッド状,迷路状,短冊状といった,種々の組織制御が達成された.これら各試料の力学特性を圧縮試験により評価したところ,Al-Mg-Zn合金にて室温から高温にまで続く高強度が見出されたが,それ以外の合金では温度の上昇に伴い強度は低応力のまま単調に低下し,期待されるような高温高強度化が実現されなかった.各試料の変形組織を観察したところ,特定部分でのせん断変形の進行が多くの材料で認められたが,いわゆるキンク変形帯のような局所変形帯の形成はほとんど観察されなかった.このことから局所変形帯導入による高強度化はロッド状組織の制御だけでは困難であることが示唆された.このような実験結果が得られた要因を数値的に検討するための計算手法の構築にも着手し,異なる変形機構を有する2相からなる合金の予備解析を実施した.来年度は以上を踏まえ,計画で想定したような加工熱処理との組み合わせによる変形帯誘導の可能性について検討する.また計算機実験の観点からも,ロッド状複相材料において期待されたせん断帯形成が実現されなかった理由,その発現のための条件について引き続き検討を進め,実験へのフィードバックを目指す.
|