研究課題/領域番号 |
21K18828
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡田 正弘 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (70416220)
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研究分担者 |
松本 卓也 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40324793)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | インプランタブルデバイス / 埋込型医療機器 / 医療用金属 / 軟組織接着 / 固定 |
研究実績の概要 |
インプランタブル・デバイスとは、生体内に埋め込んだ状態で使用される機器である。その具体例として、治療を目的にした体内埋込型医療機器が挙げられ、また、予防やQOL向上を目的とした小型チップなどの開発も活発に進められている。これらのデバイスが埋込後に目的部位から移動してしまうと重大な事故に繋がる場合がある。申請者らはこれまでに、体内埋込型医療機器の基材として用いられるチタン表面を水素化することで、生体内の結合組織がチタンと即時接着することを見出した。本研究では、チタンの表面水素化を利用してインプランタブル・デバイ スに即時接着性を付与して体内固定する新規手法の開発を目的とする。 上記の目的を達成するために、本年度の検討では、インプランタブル・デバイスの基材として用いられる純チタンの表面処理について検討を行なった。具体的には、サンドブラスト処理を行うことで表面粗さを制御した後、水素化処理を行なった。これらの処理条件を変化させて作製したチタンについて、X線回折法によって表面水素化の程度を評価し、また、走査型電子顕微鏡観察によって表面構造を評価した。次に、動物から採取した軟組織を用いて接着試験を行い、各組織に対する接着強さを定量的に評価した。これらの検討を通じて、チタンの処理条件と各組織の特性が接着強さに与える影響を明確とした。さらに、試作したチタン製デバイスの埋植試験を行ってデバイスの体内固定性を評価した。以上の検討結果を取りまとめて学会発 表ならびに論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の検討においては、純チタンを対象として軟組織接着性に及ぼす材料表面性状についての知見を得ることを目的とした。【研究実績の概要】に記載したとおり、当初の目的を達成したため「(2) おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討結果を踏まえて【研究実績の概要】に記述した目的を達成するために、軟組織の種類(真皮、結合組織、筋肉、腱 、血管)を変化させて検討を行い、軟組織の種類と接着性の関係を明確とする。この際、各組織の粘弾性特性ならびに表面自由エネルギーを測定し、接着強さとの相関について検討する。さらに、試作したチタン製デバイスの埋植試験を行ってデバイスの体内移動性を評価するとともに、組織切片観察から炎症反応ならびに線維化を評価してデバイスの安全性を評価する。以上の検討をもとに、チタンの表面水素化を利用したインプランタブル・デバイスへの即時接着性付与、ならびに、同デバイスによる安定な体内固定を実現するための基礎的知見の獲得を目指す。また、以上の検討結果を取りまとめて学会発表ならびに論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
基材として用いたチタンについて当初の見積額よりも安価に購入することができたが、次年度の動物実験に費用を要することが判明しているため、当該費用へ支出する予定である。
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