廃熱から電気エネルギーを得る技術として熱電発電があり、熱電発電材料の1つにクラスレート構造を有したBa8Si46がある。この構造のSiサイトにAuを置換したBa8AuxSi46-xでは、材料中にてAuの組成を傾斜させることでNarrow Band Gap効果を発現し、温度差を与えなくても発電することが報告され、注目されている。これまで、チョクラルスキー法により数cmオーダーの品質の良い単結晶が作製されており等温発電の効果が認められているが、本材料を今後応用展開していくためには素子の小型化が重要となっている。本研究では、素子の小型化を目指し、薄膜プロセスを利用した簡易的な手法を提案して、薄膜にてBa8AuxSi46-xのAuを組成傾斜させることを目的としている。 1年目は、基材にn型のBa8Au4Si42を用いて基材上にAuをスパッタリングで堆積したのち800℃~900℃で熱処理を施してAuの拡散による組成傾斜を試みた。得られた試料について、試料内に温度差を与えないように昇温させて起電力を測定した結果、550℃の等温下で約1.5 mVの起電力が認められ、Narrow Band Gap効果を示す材料の作製に成功した。 2年目(最終年度)は、パルスレーザー蒸着法を利用してSrTiO3基板上にBa8Au4Si42の薄膜を作製することを試みた。前年度の知見により、Ba8Au4Si42の薄膜を作製できればその層上に1年目と同様の熱処理を施すことでAuを組成傾斜できる見通しにあるためである。ArH2 ガス雰囲気下にて850℃にて1時間の熱処理を行って試料作製した。得られた試料をXRD測定して生成相の同定を行った結果、Ba8Au4Si42に起因すると考えられるピークが認められた。
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