研究課題/領域番号 |
21K18834
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
水口 佳一 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (50609865)
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研究分担者 |
長尾 雅則 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10512478)
藤岡 正弥 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (40637740)
山下 愛智 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20849351)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | ハイエントロピー合金 / 超伝導 / 水素吸蔵 / 遷移金属 / ジルコニウム化合物 / 異常熱膨張 / ホール係数 |
研究実績の概要 |
本研究では,水素吸蔵特性を有する超伝導体に注目し,水素化した際の超伝導特性や水素吸蔵量の評価を通し,水素系高温超伝導を常圧近傍で実現することを目的とした.具体的に対象とした系は,CuAl2型遷移金属ジルコナイドTrZr2であり,CoZr2,RhZr2およびTrサイトをハイエントロピー合金化(多元素固溶)したHEA-TrZr2の水素化および物性評価を行った.水素化はBELCAT(MICROTRAC社製)で行い,TrZr2に対してHが4原子程度吸蔵されることがわかった(以下ではTrZr2Hxと表記する).また,CoZr2やRhZr2では高温で急増した水素が放出されることが確認されたが,HEA-TrZr2では高温での水素放出が抑制されるメリットが確認された.一方,HEAでの水素吸蔵量の増加は確認できなかった.得られたCoZr2Hxの超伝導特性を評価したところ,水素化前に6 K程度だった超伝導転移温度が水素化で低下し,1.8 K以上ではバルク超伝導が観測されなかった.ホール係数測定および常伝導状態の電子輸送特性を比較した結果,水素化によって電子キャリアが増大することが確認された.一方,水素化試料では移動度が低下し,水素吸蔵による局所構造乱れの影響を示唆する結果を得た.移動度上昇を目指し,ピストンシリンダーセルによる圧力印加の実験を開始し,測定を開始している. 本研究と関連し,TrZr2が異常熱膨張を示すことを発見した.温度の低下によって,結晶格子のa軸は通常の収縮(正の熱膨張)を示すが,c軸は伸張(負の熱膨張)を示すことがわかった.また,周辺物質のCoZr3やIrZr3でも異常熱膨張が見出された.今後,体積熱膨張がゼロのインバー超伝導体を作製できる可能性があり,極低温と室温を往復する超伝導素子の接合面劣化などの問題が解消できると考えている.
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