研究課題/領域番号 |
21K18843
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30466776)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 界面現象 / コロイド結晶 / 流れ |
研究実績の概要 |
原料ガスが自発的に金属融液に溶け込み過ぎた結果、固体結晶が成長するVapor-Liquid-Solid(VLS)機構は、主に無機半導体のワイヤー(ウィスカー)やナノワイヤーの作製手法として広く知られている。しかし、金属融液を必要とするためほとんどの場合で高温が不可欠で、VLS機構を常温で実現することは難しいとされてきた。本研究では、常温かつ汎用溶媒でVLS様の結晶成長を目指す。具体的には、原子ではなくコロイド粒子を例にとり、溶媒内での過飽和状態の実現とVLS様の持続的な結晶成長を目指す。液液界面が物質移動にどのように影響するのかの基礎学理も明らかにする。これらの検討では、そもそもの着想に至ったシリコン固体でのVLS成長を比較対象として位置づける。 研究初年度は液液界面や気液界面がどのような性質を持つのか、焦点を当てた。VLS様の結晶成長を行うには連続的な原料供給を液滴内部に行う必要がある。これには速度過程が関与しており液液界面や気液界面が液輸送に与える影響を検証した。液液界面ではその面積が大きいほど流れを妨げるが、気液界面ではその界面積ではなく界面間に存在する液体の量が重要な因子であることを突き止めた。また、コロイド粒子を輸送する際に、液液界面に粒子が吸着することも想定される。粒子が吸着した液液界面の力学的な性質についても検討した。液液界面にコロイド粒子が吸着すると固体的な性質が発現する。さらに塩を加えると、粒子同士の相互作用が変化し、液液界面の硬さも変わることをそれぞれ明らかにした。液体が関与する界面に関わる重要な現象を複数明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
柔軟で変形可能な液液界面や気液界面に関する現象の理解を進めることができた。コロイド粒子がこれらの界面を通過するプロセスが関与するため、研究を進める上でいずれも重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
液液界面や気液界面を介した物質移動や輸送、過飽和状態にあるコロイド分散液で起こる粒子充填のメカニズムに対象を広げる。界面に吸着するコロイド粒子の存在確認や界面を介した物質移動を同定量的に測定するかなど、観察手法の難易度が高いが、非接触・非破壊の光学的手法で観察しする。いずれの現象でも速度過程を重視して、理解を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった高額物品は、研究室内での運用を見直し、これまで所有していたもので当面代用できる体制にした。また、少量のサンプルでの実験/観察が可能であったため、当初想定していたよりも消耗品の使用量が少なく済んだ。さらには、コロナ感染症に伴う出張制限のため、予定していた国内出張も全てオンラインに変更した。これらのことから次年度使用額が生じた。次年度使用額に相当する金額を、精緻な観測が行える観察系の構築やコロナ禍軽減で再開が見込まれる国内外の出張旅費等に充当する予定である。
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