研究課題
本研究では、常温かつ汎用溶媒でVapor-Liquid-Solid(VLS)メカニズムに似たコロイド結晶の成長を目指し、関連する気液、液液界面の性質を広く検討した。界面を介した物質移動や、液液/気液界面が流れに与える影響、コロイド粒子以外の物質が溶解した場合の濃縮が物質移動に与える影響、さらには結晶成長に必要な粒子濃縮がどのように起こるのかのその場観察、の四点に焦点を当て、以下の点を明らかにした。(1)水相に溶解した両親媒性分子は、水の蒸発に伴い周囲の輸送に自発的に移動する。このときの組成は平衡組成とは必ずしも一致しない。これを粒子に置き換えて考えると、粒子の分散限界濃度は通常静的な溶液中で測定されるが、濃縮プロセスを伴う場では、参考程度にしかならない。(2)液液界面が大きいほど、液滴を含んだ流体(エマルション)の流れは阻害される。気液界面(泡)の場合は気液界面積ではなく、泡層がどの程度水を含んでいるのかで気泡間での水の流れやすさが決まる。VLS様の結晶成長をさせるための原料(=コロイド粒子)の連続供給に活用できる知見である。(3)ポリマーとコロイド粒子が同時に濃縮される系では、粒子間空隙にポリマーが捕捉され、水の蒸発が著しく阻害される。コロイド結晶のバインダーとしてポリマーを用いる場合に考慮しなければならない。(4)VLS様のコロイド結晶成長を行う際に必要な粒子濃縮は、当初の想定以上に分散液内部の流れを誘発する。特に結晶成長が起こる界面付近の粒子濃度を高める必要があるが、その際には液滴内部の流れにも考える必要がある。これらの事実は研究開始当初には予想していなかった事柄ばかりであり、常温汎用溶媒でVLS様のコロイド結晶成長をさせるために不可欠な知見が得られたと結論づける。
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