マイクロ波(MW)を極短時間照射するだけで、アンモニアと酸素の酸化分解による水素製造を瞬時に起動し,以降は無加熱で水素を発生し続ける利便性に優れた革新的な触媒プロセスを開発することを目的とした.特に,MW照射下での触媒の挙動を詳細に解析し,短時間のMW照射で反応を起動できる触媒組成・構造を明らかにし,触媒の設計指針の獲得につなげることが狙いである. 今年度は活性金属や担体の種類が異なる触媒を調製し,MW照射による起動実験を行った.なお,Operand XAFSによる起動挙動の検討も試みたが,反応器や触媒ペレットの形状の違いにより,反応を起動することができなかった.しかしながら,サンプル試料の調製や発熱の起こりやすさに関して重要な知見が得られた. 研究期間を通じて,金属の種類によって,MW照射下での触媒の昇温や起動の挙動,あるいはMW照射停止後の活性挙動が大きく異なることが分かった.また,アンモニアの酸化分解が多段階反応であることも明確になった.さらに,これらの実験結果の詳細な解析によってアンモニアの酸化分解が容易に起動し,MW停止後に高活性を得ることのできる金属に関する様々な知見が得られた.起動後の活性についても,個々の反応に対する反応性を詳細に検討することで,これらの関係を明確にすることができた.さらに,反応中の触媒の状態についてもキャラクタリゼーションにより明らかにし,この状態が,瞬時起動の繰り返し特性に大きな影響を及ぼすことが分かった.さらに,MW照射無しでの起動挙動との比較により,MW照射による特性の変化に関する知見を得ることができた. 以上の研究成果により,新しい発想によるアンモニアからの水素製造プロセスの構築に成功し,その触媒挙動を明らかにすることができた.
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