研究実績の概要 |
本年度は酵素カスケード反応に適した細胞内代謝経路の構築を行った。特に、補酵素であるNADH/NAD, NADPH/NADPのそれぞれのバランスに注目した。ペントースリン酸経路、Entner-Doudoroff 経路を強化することでこのバランスを制御できる。また、TCA回路の流量を制御することでも同様にこのバランスをコントロールできる。これらの経路を強化するために、それぞれに適した遺伝子を導入した。予備的検討ではNADH/NAD, NADPH.NADPのバランスにはあまり変化が見られなかったが、これはカスケード反応を入力していないためであると考えられる。並行して、反応のモデルとの1つとしてバニリン生産経路の構築を進めた。デヒドロシキミ酸からプロトカテク酸を経てバニリン酸、プロトカテクアルデヒドへと分岐し、そこからバニリンへと収束する。このモデル経路の構築のためにDSD, OMT, ACARの3つの遺伝子を導入して中間体及びバニリン生産を評価した。遺伝子導入によりバニリン生産が確認され、またそれぞれの酵素の発現量に応じて中間体を含む経路のそれぞれの代謝物が変動することが示された。炭素源など培養条件の検討を行い、また遺伝子発現量を再度検討することで、中間体がさまざまな割合で生産する微生物株を構築できた。一方で、生成したバニリンが引き続き分解されている可能性も示唆された。この点については分解遺伝子をほぼ特定できており、この欠損株を作成することで検討を進める。
|