研究課題
次世代の有機資源の1つとして期待される海藻は,食料や淡水資源と競合しない,成長速度が速くて太陽光利用効率が高い等,資源作物として利点が多い。海藻の構成成分(水を除く)の約半分は「細胞間粘質多糖」であり,酸性官能基および金属カチオンを含有するヘテロ多糖である。類似の細胞間多糖である陸上植物のヘミセルロースは,セルロースと同等に多量の資源量がある。これらの多くはグルコース以外の1~数種の単糖で構成される多糖であり、単糖由来の高付加価値化合物(低分子量硫酸化多糖,オリゴ糖,希少糖等)の原料として有望である。しかし,それら多糖は種類も多く酵素法の適用が困難とされる。そこで本研究では,光触媒と熱触媒を組み合わせた固体触媒法により,従来法の課題であるバイオマス中に存在する金属イオンによる失活を受けにくく,温和な反応温度で加水分解を促進する革新的な固体酸触媒の開発をめざして研究をすすめた。海藻として,最も高い成長速度を有するミナミアオノリに着目し,タンク養殖法でクローン的に約2kg(乾燥重量)を培養生産した。そこから、水熱法で、主構成成分であるウルバンという硫酸化多糖を抽出した。物性評価し,分子量は約800,000であった。その触媒水熱法による加水分解において、反応条件(反応温度、時間、触媒量)により、ウルバンの分子量および硫酸化度を制御できることを示した。得られた低分子量ウルバンの構造を、HPLC、GPC、IC、GC-MSなどのクロマト分析、および、元素分析、ICP、FTIR、NMRなど種々の分析法により解析し、基本の4糖単位が、[硫酸化キシロース-ラムノース-グルクロン酸-硫酸化ラムノース]であることが示唆された。また、光触媒により多くの糖から有機酸への選択変換が可能であった。本研究の触媒プロセスが海藻多糖やヘミセルロースなど多くのバイオマス多糖に適用可能であることを占した。
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