研究課題
ギ酸は小分子であり、原料は糖類の種類に依存せず、また、代表的な水素キャリアであり、触媒を用いると温和な条件で高効率な水素発生が可能である。木質系バイオマスからギ酸への酸化的変換反応を固体触媒を用いて実施した。昨年度においては、単糖であるグルコースやその分解物からギ酸への変換反応を実施し、塩基触媒である酸化カルシウムが特に良好な活性を示すこと、および分解に至る反応パスについて明らかにした。今年度においては、多糖類からギ酸への変換を主な目的として研究を行った。まず、セルロースの構成ユニットである二糖類のセロビオースを基質として用い、昨年度見いだした酸化カルシウムと過酸化酸素を酸化剤としてギ酸合成を試みたところ、二糖の加水分解反応があまり進行しなかったことから、ギ酸の収率は低かった。触媒や過酸化水素量等の反応条件を種々検討しギ酸の収率は多少向上したものの、固体塩基触媒単独では二糖類からギ酸を選択的に合成することは困難であった。そこで、はじめに糖加水分解を促進させるために、固体酸触媒を加え、その後固体塩基と過酸化水素を添加し反応を行ったところ、ギ酸の収率が大きく向上した(マルトースの場合ギ酸収率37%、セロビオースの場合ギ酸収率33%)。このように多糖類からギ酸を合成する場合、酸によるグリコシド結合の開裂(糖加水分解)と塩基によるギ酸生成の、酸塩基を用いた2つのステップが有効であることがわかった。この場合、後段のギ酸生成よりも前段の糖加水分解の方が律速であることがわかった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Applied Catalysis A: General
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