本課題は特異な協奏機能が発現する反応場を形成する集積型固定化分子触媒の設計・合成と環境低負荷型の精密合成プロセスへの適用に関する。特に申請者独自で開発した錯体触媒による立体特異的リビング開環メタセシス重合により、形状・組成を緻密に制御した星型・球状・ボトルブラシ(bottlebrush)型の特異形状ポリマー表面に機能の異なる錯体・活性化剤を担持し、集積化による特異な協奏機能が発現する反応場の創製による革新的な精密合成プロセスの開発を目的としている。2023年度の代表的な成果は以下の通りである。 2022年度までの成果を基盤に、芳香族イミド配位バナジウム錯体触媒によるポリマー鎖を側鎖に有するノルボルネン誘導体のcis/trans特異的なリビング開環重合手法を用い、官能基を表面に有するbottlebrush型の特異形状ポリマーの精密合成手法を開発した。この手法により、今迄実現不可能であったノルボルネン型bottlebrushポリマーのオレフィン二重結合のE(90%以上 trans)/Z(98->99 % cis)選択性の制御が配位子の修飾により可能で、得られるポリマーの形態(モルフォロジー)・ポリマー鎖間相互作用の違いにより、立体規則性による熱物性にも違いがみられた。この違いは原子間力顕微鏡などでも観察でき、最終的に目的とするフェノキシ配位子前駆体を表面修飾した特異形状bottlebrushポリマーの精密合成も達成した。現在は表面修飾した配位子前駆体との反応による分子触媒の合成・同定に取り組んでおり、同定後はこの成果を基盤とした触媒機能開発に関する研究に取り組む予定である。
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