研究課題/領域番号 |
21K18856
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
吉田 朋子 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 教授 (90283415)
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研究分担者 |
山本 宗昭 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 特任助教 (50823712)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 液中プラズマ放電 / 銀クラスター・ナノ粒子 / in-situ 発光・光吸収測定 |
研究実績の概要 |
石英ガラス製反応容器,金属ロッド電極,パルス発生電源を用いて,水溶液中でプラズマ放電を可能とする液中プラズマ発生装置を構築し,放電条件(パルス電圧,パルス幅,周波数)を変えることでプラズマ発生状態を制御することが可能になった.電極に銀ロッドを用いてプラズマ放電させながら,水溶液の発光スペクトルを測定した結果,放電中には,電子の他に各種ラジカル(水素,酸素,OHラジカルなど)も生成すること,この生成した電子やラジカル種が銀ロッドに作用することで,水溶液中に銀クラスターや粒子が生成することが明らかとなった.ナノメートルサイズの小さな銀粒子を生成させるための条件を探索した結果,放電条件の他に,水溶液の種類によって銀ナノ粒子のサイズや生成速度が大きく変化することが分かった. 一方,ナノ粒子のサイズや化学状態を緻密に制御するためには,その生成過程を理解することが不可欠であり,液中プラズマ放電中のin-situ光吸収測定を実施した.即ち,水中に存在するクラスターやナノ粒子は,それぞれの化学状態や形状に応じた波長の光を吸収することを利用して,プラズマ放電中に外部から紫外・可視光を入射させ,マルチチャンネル分光検出器を用いてUV-visスペクトルのその場測定を行い,水溶液中に生成する銀クラスターや銀ナノ粒子にそれぞれ帰属される吸収スペクトルを得ることに成功した.更に,放電時間に対する吸収波長・強度の変化と,TEM測定による銀ナノ粒子物性分析結果を対応させることにより,液中プラズマ放電中に生成する銀クラスターや粒子のサイズや化学状態を直接評価することが可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プラズマ材料工学における最近の論文や研究例を参考にすることで,当初予定していたよりも短期間で,水溶液中でプラズマ放電をさせることに成功した.また液中プラズマ法で,金属クラスターや金属ナノ粒子を効率よく生成させたり,粒子の凝集を抑制するためには,放電条件の制御だけでなく,用いる水溶液の種類や濃度を適切に選択することが重要であることを見出した.これらの知見から,銀クラスターや銀ナノ粒子を生成させるために有効な水溶液としてアンモニア溶液を選択することができ,当初予定していたよりも早い段階で銀ナノ粒子を高速で合成することができた. 一方,放電中に水溶液で発生する電子やラジカル種について知見を得るために,放電中のin-situ発光測定を実施した.この時に確立したin-situ分光分析の手法を,そのままin-situ光吸収測定にも応用できたため,液中に生成する銀クラスターや銀ナノ粒子に由来する吸収スペクトルを得ることができ,2021年度中にTEM測定による銀ナノ粒子物性分析結果と対応付けることができた.以上の理由から,当初予想していたよりも研究は順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
液中プラズマ放電は,金属ナノ粒子助触媒の生成のみではなく,酸化物光触媒表面の化学的改質,及び物理的形状改質にも利用されると考えている.具体的には,電極をWなどの望ましい金属に交換し,放電で発生する活性反応種(水素・酸素・OHラジカル・電子等)と浮遊させた酸化物光触媒とを反応させ,触媒表面上に,金属ナノ粒子のサイズに適合した凸凹構造(窪み)を形成させる触媒表面ナノディンプリングや,ナノ粒子固定化アンカーとしての親疎水性官能基付与を達成する.改質された表面の,化学的性質,物理的性質をSEMやIR測定により評価し,放電条件等にフィードバックさせる. 一方,液中プラズマ法を用いて合成した銀ナノ粒子を,酸化ガリウムに担持した光触媒を調製し,その光触媒活性を水による二酸化炭素還元反応により評価する.具体的には,様々なサイズのナノ粒子助触媒を合成し反応結果と比較することで,助触媒の最適なサイズを決定する.またナノ粒子助触媒をそのまま酸化ガリウム表面に担持した場合と,凸凹構造や官能基を付与した酸化ガリウム表面に担持した場合の二種類の調製を行い,ナノ粒子のサイズ・形状と,酸化ガリウム表面の構造及び親疎水性が,光触媒反応活性・安定性に及ぼす影響を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で放射光施設での実験など2021年度に一部遂行できなかった研究もあったため、2022年度以降に実施し十分成果が挙げられるようにした
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