前年度までの検討で、CVD法によるBNNT合成ではホウ素源と窒素源の両方を同時に活性化する触媒の開発が困難でBNNTの量・質ともに不十分であったため、本年度は鋳型合成法を検討した。 電池セパレータへの応用を想定して、安価なホウ酸をホウ素源に、安価な流動層法CNTの厚さ数10 μmのスポンジ膜を鋳型に用いて、BNNT厚膜の作製を検討した。ホウ酸の供給方法を三種検討、蒸気供給ではホウ酸の蒸気圧を高めるために加熱するとホウ酸の融解と脱水により十分量を安定に供給できず、ホウ酸水溶液のミスト供給では過剰の水が供給されCNT鋳型が酸化損傷される課題があった。ホウ酸水溶液へCNT膜を含浸する方法では、事前にCNTを混酸で酸化して親水化すると十分量のホウ酸を担持できた。ホウ酸担持CNT膜をNH3/Ar流通下1100℃で窒化、1500℃でBNの結晶化処理を行ったうえで、O2/N2流通下700℃でCNTを燃焼すると、白色のBNNT自立膜を得ることができた。 また、透明なエアロゾルフィルターへの応用を想定して、酸素を含まないアンモニアボランをホウ素・窒素源に、良質な浮遊触媒法単層CNTの厚さ100 nm程度のネットワーク状膜を鋳型に用いて、BNNT薄膜の作製を検討した。CNTの溶液分散、吸引ろ過、水面へのCNT膜の分離と、穴あき基板への転写によりCNT自立膜を作製、アンモニアボランを68℃で昇華し900℃でCNT膜へBNコート、700℃でO2/N2ガスによりCNTを酸化除去することで、半透明なBNNT自立薄膜を得ることができた。しかし破れやすい膜であり、BNの小さなドメインの集合体になっていることが原因として考えられ、高温での結晶化処理などが必要と考えられた。 CNTを鋳型に用いた鋳型法によりBNNTの厚膜と薄膜の作製を実現したが、実用には機械強度の向上が必要である。
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