研究課題
テラヘルツ波は3次元イメージングが可能な可視化手段として、医療診断、LSIチップの故障解析、セキュリティ対策、医薬品、食品の品質管理等分野への応用が期待されている。従って、効率的な小型テラヘルツ発生デバイスの開発は急務である。グラフェンがシリコンの100倍以上の電子移動度が持つ。本研究は、この極めて高い電子の移動度・長い平均自由行程など優れた電子伝導特性を利用し、グラフェン薄膜・垂直半透明スピン薄膜の二層化によって、テラヘルツ波発振素子の実現を目的としている。透明度の高い磁化膜及びそのグラフェン薄膜との二層化は本研究の実験重点である。シミュレーション並びに検証実験を行った。グラフェン薄膜に関して、新規な磁性薄膜上に一括生成の方法を採用した。これらのグラフェン薄膜をフェライト薄膜上に転写の方法も試みた。本年度では、合成石英基板を用いて、透明度の高い正方晶系フェライト薄膜に着目し、実験を行ったところ、反強磁性正方晶系フェライト薄膜、保磁力10kOe以上の正方晶系フェライト薄膜の形成が成功した。厚さ150 nmの反強磁性正方晶系フェライト薄膜の可視領域で90%の透過率を得られた。特に反強磁性正方晶系フェライト薄膜は優れた絶縁性質を持つと共に、テラヘルツの磁性共鳴周波数を示す。更に、試料を750度まで加熱し、毎秒100度瞬間冷却可能な新規熱処理方法を導入し、磁性薄膜上にグラフェン薄膜の形成をラマン分光により確認できた。これらの手法を用いて、学理的にはグラフェン薄膜と反強磁性正方晶系フェライト薄膜の界面のスピン軌道相互作用の研究を可能になった。応用の面から、新規なスピンデバイス、磁気抵抗変化型の高密度集積可能なメモリーへの応用も可能になった。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件)
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