研究課題/領域番号 |
21K18873
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 篤智 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20419675)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 転位 / 半導体 / キャリア |
研究実績の概要 |
無機半導体材料においては、結晶格子欠陥が、自由電子やホールの挙動に強く影響を与えることが知られている。これは転位コア局所の元素配列の乱れが構造電荷を生じるとともに、構造電荷と自由電子やホールなどのキャリアが静電相互作用を起こすためとされる。これまで、このような半導体中の転位がどのようにキャリアに影響するのか、どれくらいのキャリアを集められるのかについて実験的に評価されたことがなかった。これは転位のサイズがナノスケールであり、実験が容易でなかったためである。半導体の転位が実際にどれくらい影響するのか理解することは半導体を利用する上で重要な知見である。そこで本研究では、構造電荷に伴うキャリアの集積状況を調べるために、ナノスケールで計測する手法を検討する。これにより、代表的な結晶格子欠陥である転位の持つキャリア集積機能を理解する方法の確立に繋げることを目標としている。構造電荷を有する転位は極性結晶構造の材料系において双結晶法を用いて小角粒界を作製することで周期的に作り込むことが可能である。また、研磨等により表面から導入することも可能である。そこで、転位を導入した試料を人工的に準備し、それをナノスケールで実験的評価を行う。計測手法としてはナノスケールの電気的特性を抽出可能な原子間力顕微鏡を応用する。初年度となる令和3年度は実験手法の構築と双結晶の作製に挑戦した。現在までに、一部の双結晶の作製と原子間力顕微鏡の立ち上げが完了している状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の令和3年度では高温炉を用いて極性結晶材料の双結晶作製に挑戦した。一部の材料系において双結晶作製に成功済である。また、原子間力顕微鏡の装置を改善し、より定量的な実験が可能な体制を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
極性結晶を用いた双結晶作製に一部成功しているので、今後も極性結晶を用いた双結晶作製を通して、構造電荷を有する転位構造を創製していく。それらに対して改良した原子間力顕微鏡法により評価を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に、当初購入予定の物品価格が予定より高額となると予想されたため前倒し請求を行った。前倒し請求額では高く見込んだ物品が実際にはやや安価に購入できたため、前倒し請求の一部が残額となった。なお、令和3年度に前倒し請求が可能であったおかげで効率的に研究を実施できた。令和4年度も残額と合わせて効率的に研究を遂行可能と考えている。
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