研究課題/領域番号 |
21K18876
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 真之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00362666)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 氷表面 / 疑似液体層 |
研究実績の概要 |
氷表面を原子間力顕微鏡で測定する場合、氷結晶を成長させる必要があることから、温度をゼロ度付近から摂氏-20度まで変化させる必要がる。このときに問題になってくるのは、探針と試料の相対位置が変化する熱ドリフトの影響である。つまり、相対位置が大きく変化するため、ねらった位置での測定が困難になる。したがって、(1)走査そのものの速さを改善し、さらに(2)熱ドリフを補償する方法が必要である。このためには、ハードウェアとソフトウェアの性能を限界まで引き上げる必要がある。これまで高速走査が可能なスキャナの開発に成功していることから、本年度はソフトウェアによる測定方法の新規開発を行った。具体的には、主に以下の2つの成果を得た。
(1)画像取得速度の改善に関して これまでの研究において、機械学習ではないが)冗長DCTアルゴリズムを用い、実際に測定したデータのうち実際の1/8のデータからもとのデータを再現できるアルゴリズムを実現しており、本年では、実際の実験において本手法が実施可能かどうかを確認した。その結果、いくつかの走査方法から螺旋状に探針の動きを制御することで、画像補完が可能であることを実証した。 (2)熱ドリフト補償手法の開発 これまでの研究において、コンピュータゲームを開発するツールであるUnityの仮想空間上に実験データを用いてシミュレーションを実施したところ、3次元の熱ドリフト補正を行えることがわかってきた。本年度は、連続で取得した画像を用いて、その画像における特徴点を抽出し、画像ごとのずれから熱ドリフトを算出することで熱ドリフトを補正する方法を開発した。その結果、熱ドリフトが存在する環境であっても、24時間以上同じ領域を原子レベルで画像取得できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
氷測定で
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今後の研究の推進方策 |
上述したとおり、氷表面を原子間力顕微鏡で測定する場合、ハードウェアとソフトウェアの性能を限界まで引き上げる必要があり、ソフトウェア的には(完全ではないが)熱ドリフトを改善できることを実験的に示すことができた。さらに、熱ドリフト補償に関しては、現在、ニューラルネットワークによって画像を学習させる方法を開発しており、予備実験的には実現可能なレベルに達している。また、ニューラルネットワークを用いた場合は、探針の変化によって画像のコントラストが変化しても対応できるような結果も得ており、今後の進展が期待できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部購入物品の納期が遅れたため。
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