研究課題/領域番号 |
21K18877
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鶴田 健二 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (00304329)
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研究分担者 |
三澤 賢明 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (00823791)
大村 訓史 広島工業大学, 工学部, 准教授 (90729352)
羽田 真毅 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70636365)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 音響トポロジカル絶縁体 / テラヘルツ弾性波 / 人工ニューラルネット分子動力学 / 時間依存密度汎関数分子動力学シミュレーション / 時間分解電子線回折実験 |
研究実績の概要 |
本研究では,近年,波動伝搬のロバスト性により注目が集まるトポロジカル絶縁体の概念を,音波・弾性波に拡張した“トポロジカル・フォノニクス”により,Beyond 5G時代の超高周波弾性波デバイスの動作原理の理論実証を目指している。初年度の実施実績・成果を,全期間を通した達成目標項目ごとに以下に記す。 (A)原子レベルのトポロジカル相界面の局在フォノン伝搬理論確立 フォノンバンド計算によるトポロジカル相界面のエッジ状態を持ちうる物質とその結晶粒界構造,および人工周期構造を探索している。今年度は特に,BN基板上のグラフェン構造に着目し,モアレ構造を持つその界面に対するМD計算を実施し,有限温度でTHz領域のフォノン状態密度などといった基礎的特性について知見を得ている。 (B)トポロジカル相界面に対する光励起による局在フォノン制御 原子間の結合状態を光励起で変化させることによる振動状態の変化を,線形応答理論に基づく密度汎関数法計算ならびに時間依存密度汎関数法に基づく第一原理МDシミュレーション法で試みている。対象例として,上記グラフェン/BN構造におけるヘテロ接合系(モアレ構造)でエネルギーがどのように片方の層からもう一方の層へと遷移するかを試みている。 一方,電子線回折実験としては,CNTとBNNTのヘテロ接合を作製し、CNTを光励起したときにBNNTにどのようにエネルギー(振動)が伝わるのかを実験しており,計算と実験の両面から,本現象の微視的メカニズムの解明に向けた解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フォノンバンド計算による原子レベルでのポロジカル相界面エッジ状態探索は,まだ確定した結果導出に至っておらず,この部分は遅れているといえるが,グラフェン/BN構造は新規物質として注目を集めており,サンプル作製も含め順調に進展している。また,GHz帯のバンド設計に基づくサブμスケールのトポロジカルフォノニック構造の設計とエッジモード伝搬の数値シミュレーションには成功しており,同じ対称性を持ち数十ナノメートルまでスケールダウンすることにより,THz帯でエッジモードを発現しうる構造発見に至っている。以上の進捗状況から,全体としてはおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究遂行計画・目標を,全期間を通した達成目標項目ごとに以下に記す。 (A)原子レベルのトポロジカル相界面の局在フォノン伝搬理論確立 初年度に引き続き,フォノンバンド計算によるトポロジカル相界面のエッジ状態を持ちうる物質とその結晶粒界構造,および人工周期構造を探索する。三澤は初年度に探索したトポロジカル構造の第一原理計算を行い,そのデータをもとに,人工ニューラルネット(ANN)機械学習による経験的相互作用ポテンシャルを導出,大規模МD法によるフォノン伝搬シミュレーション解析を実施する。 (B)トポロジカル相界面に対する光励起による局在フォノン制御 初年度のグラフェン/BN構造におけるヘテロ接合系(モアレ構造)での層間エネルギー輸送を継続するとともに,光励起による原子間の結合状態転移の第一原理MDシミュレーション解析を実施する。一方,光励起状態に伴うエネルギー変化とフォノンモード変調に関する電子線回折実験も実施し,トポロジカルな界面でのTHzフォノン輸送に関する制御法の基盤構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で県をまたぐ移動ができず,当初予定していた対面での打ち合わせ及び学会参加をオンラインに切り替えたことで未使用額が生じた。そのため,次年度は当初予定より密に打ち合わせを行いながら,成果発表(学会発表や論文投稿)に関する費用として未使用額を使用していく予定である。
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