研究課題/領域番号 |
21K18880
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
有江 隆之 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80533017)
|
研究分担者 |
秋田 成司 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (60202529)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 二次元原子層 / 面外熱抵抗 / ヘテロ構造 |
研究実績の概要 |
本研究では異なる二次元材料を積層し、層間の熱伝導を独自の方法で見積もることで、次世代電子デバイスとして期待されている二次元積層ヘテロデイバスの同味の効果的な排熱に資する知見を得ることを目的としている。 今年度までに2次元原子層薄膜の面内・面外熱(フォノン)伝導を明らかにしてきた。層間の相互作用がフォノンの伝導にどのように影響を与えているかを積層角の観点から論ずるため、量子エミッタとしても注目されているh-BNとグラフェンの層間熱コンダクタンスを計測した。また、より高精度な熱計測のため、ダイヤモンド中のNVセンターを用いた温度計測システムを開発した。さらにグラフェン/h-BN/グラフェンの3層構造としたときの面外熱抵抗を計測し、層間熱伝導とフォノンプラズモンの輻射のついても検討した。 一方h-BNとグラフェンの層間相互作用の影響を低周波フォノンの観点から明らかにするため、積層構造の機械共振を計測した。積層に基づく特異な振動形態を確認し、熱伝導にも影響を与える因子を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子層の積層角度を変調し層間の相互作用がフォノン伝導に与える影響を明らかにするため、基板上のグラフェンをジュール加熱し、直上のh-BNの温度をラマン分光法で計測することで層間の熱コンダクタンスを調べた。積層角度18度において熱コンダクタンスが107W/m^2Kとなり、理論から予測される値より一桁小さい結果となった。これは層間の不純物による散乱が原因であると考えられる。今後はダイヤモンド中のNVセンターを温度センサとするシステムを援用することで層間の温度を詳細に計測し、原子層の層間相互作用とフォノン伝導の関係を明らかにしていく。 フォノンプラズモンによる熱輻射の影響を明らかにするため、グラフェン/h-BN/グラフェンの3層構造を作製し、下層のグラフェンをジュール加熱したときの各層の温度をラマン分光による計測した。この際、下層グラフェンと上層グラフェンとで異なる同位体(12Cと13C)から形成されるグラフェンを用いることで、それぞれの温度が同時に独立にラマン分光による計測されることを利用した。その結果、12Cとh-BNの層間熱抵抗がゼロで温度差がほとんどなく、2層構造における界面抵抗から得られる温度差とは全く異なる結果が得られた。これは積層構造を作製する上で、層間にレジスト残渣や不純物が入り込むことにより正確な層間熱抵抗が計測できないことが原因と考えられる。今後は層間の不純物を排除した積層構造の作製が必要である。 一方グラフェン/h-BNの機械振動では、層間相互作用に起因した振動形態の変調を確認した。これが熱伝導にどのように影響を与えるかは不明であり、今後積層角を含めた面間相互作用における追実験が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
さまざまな積層角を有する原子層の層間熱輸送を明らかにすることで、層間相互作用とフォノン伝導の関係を明らかにしていく。また2次元原子層薄膜内に制御良く歪みを印加する転写技術を利用し、歪みとフォノン伝導の関係も明らかにする。歪みの面内分布を可視化するため、ダイヤモンド中のNVセンターを利用した面内歪み計測手法の開発も同時に行っていく。さらに積層角が異なるヘテロ構造において、相互作用が機械振動に与える影響も検証していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究結果の再現性立証のための追実験ならびに結果の学会・論文発表に使用する
|