本研究では異なる二次元材料を積層し、各層の局所温度を独自の方法で見積もることで層間熱伝導を明らかにし、次世代電子デバイスとして期待されている二次元積層ヘテロデバイスの効率的な排熱に資する知見を得ることを目的としている。 デバイス動作中における原子層膜の面内および面外の温度を精密に計測するため、ナノダイヤモンド中のNVセンターを用いた磁場・温度計測システムを構築し、トランジスタ動作するグラフェン内の局所電流によるエルステッド磁場を計測した。グラフェンチャネル全体の電流は一定であるにも関わらず、ナノダイヤモンド近傍の局所的な電流値はゲート電圧により変化しており、これはグラフェンとゲート絶縁膜界面で起こる化学的な酸化還元反応と、ナノダイヤモンド近傍における反応の抑制の結果であると結論づけられた。 一方デバイス動作中における原子層ヘテロ構造の層間熱計測に向け、原子層膜の1つである六方晶窒化ホウ素(h-BN)内の欠陥中心にも着目した。h-BNに窒素イオンを注入して欠陥を導入し、ホウ素空孔由来のおよそ820nmを中心としたフォトルミネッセンスを観測した。光検出磁気共鳴の結果から、ホウ素空孔(VB-)のゼロ磁場分裂に起因した3.48GHzの信号を観測し、本手法で導入した欠陥を量子センサとして利用可能であることを示した。さらに原子層膜に歪みを導入するため新たにナノインプリント技術を適用し、原子層膜に損傷を与えることなく周期歪みを印加できること、さらに、再現よく従来の手法より大きな歪みを印加できることを実証した。
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