研究課題
本研究では,液晶分子の集合体をテンプレートとした金微粒子集合構造についての,光による不斉誘起の試みを一つの主要なターゲットと考えた。そのための試料は,代表者がポーランドの研究者との共同研究を通じて入手することとしていたが,パンデミックのためにポーランドとの連絡・往来が円滑に行えず,この系については想定した進展が得られなかった。関連する不斉誘起を試みる系として,キラルでないプラズモン物質へのキラルな構造を持つ光の照射により,光化学反応を通じて,キラルなナノ構造を生成する試みを継続した。キラルでないプラズモン物質はガラス基板上に準備し,その周辺に光反応を起こす物質を液体状態で満たした。その上で系に左右円偏光を照射して光化学反応を誘起すると,プラズモン物質周辺のキラルな位置に反応物が生成・付着した。このナノ構造体の状況を,電子顕微鏡等で観察すると,生成したナノ構造体の掌性が入射する円偏光の掌性で決まることが明らかとなった。単一のナノ構造体の円偏光二色性を,我々の独自の技術である円偏光二色性顕微イメージング装置で観察したところ,構造体の掌性に応じた円偏光二色性信号を示すことが見いだされ,生成物のキラル光学効果が,構造の掌性に相関していることがわかった。条件を選ぶと,極めて特徴的な,渦巻状キラル構造がプラズモン物質の周辺に生成することが見いだされた。この特徴的なキラル構造生成の機構についての情報を得るため,設定したプラズモン物質に円偏光を照射したときの周辺の電場構造について,電磁気学シミュレーションを行った。アキラルなプラズモン物質に円偏光を照射することで,周辺に渦状の光強度分布が発生することがわかり,それが渦巻状キラル構造が生成する要因になっていると考えられる。ポインティングベクトルの空間分布も調べたが,渦状の光の運動量の流れは弱く,それが構造生成の主要因ではないと考えている。
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