研究課題/領域番号 |
21K18886
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡嶋 孝治 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (70280998)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 発生胚 / 原子間力顕微鏡 / メカニクス |
研究実績の概要 |
原子間力顕微鏡(AFM)は、無機材料から生体材料までの表面構造や力学特性を高い時間空間分解能で計測することができる。AFMは液中で測定可能であることから、生細胞の力学測定法としても広く用いられており、現在、1細胞の粘弾性計測技術が確立しつつある。一方で、組織や発生胚のような多細胞系の弾性と粘性を区別する技術は未確立である。さらに、多細胞系は、個々の細胞自体の弾性率だけでなく、細胞間の張力も重要な役割をしているが、その弾性率と張力とを分離する技術は確立していない。本研究では、AFMを用いて発生胚の弾性・粘性を定量化し、弾性率と張力を分離する技術を開発することを目的としてりる。令和3年度は、ボルツマンの重畳原理に基づく接触理論を考慮して、非線形力応答曲線を解析することにより胚細胞の弾性と粘性の分離する技術を構築した。非線形力応答曲線を取得する際、一定速度ではなく正弦振動による力場を利用することで、押込み速度の動作範囲を拡大し、その測定条件において、サンプルの粘弾性を一意に決定できることを示した。さらに、多細胞系として上皮細胞ドームを利用して、弾性率と張力の測定を分離して決定する手法を提案した。本手法で解析した結果は、先行研究の数値計算結果とも良い一致をしたことから、半定量的な解析が可能であることが分かった。さらに、発生胚の測定を妨げずに、走査範囲を自在に変更可能な機能を追加し、卵割過程の1細胞内の詳細な力学分布の測定が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の計測技術の開発は順調に進展している。一方で、コロナ渦の影響で、システム制御用装置の納品に遅延があった。この納品後にAFM計測に必要なFPGAプログラムを自作する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に開発した技術をシステムに組み込む。その開発したAFMシステムを用いて、非線形力応答曲線の力学解析を利用した、発生過程の胚細胞の弾性・粘性および弾性率・張力の時空間マッピングを実現する。そして、発生胚の粘弾性および張力の空間不均一性を評価する包括的マッピング技術を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦・半導体不足による、発注済み物品(952,182円)の納品遅れによる。
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