近年、キラティ誘起スピン偏極というキラリティに由来する巨大なスピンフィルター効果が注目を集めている。しかしながら、何故そのような効果が起きるのかという微視的なメカニズムに関しては未解明な部分が多い。そこで本研究は、原子分解能とスピン分解能を有するスピン偏極STMを用いて、キラル分子・システインのスピンフィルター効果について1分子レベルで検証した。Au(110)基板上に鏡像異性体であるD-システインとL-システインそれぞれのダイマー構造を形成し、スピン偏極STM測定によりスピンフィルター効果について調べたところ、システインを通ってきた電子がスピン偏極しているという有意な結果は得られなかった。
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