本研究では、ファンデルワールス層状物質へのキラルイオン液体の電気化学的インタカレーションという新奇な手法によって、キラルな結晶構造を有する超伝導体の創製に成功するとともに、分子キラリティに由来する非相反超伝導特性を観測した。非相反超伝導の発現機構にはスピン一重項超伝導とスピン三重項の混成状態が関わっているとの理論的指摘も存在しており、分子キラリティの導入が超伝導状態におけるスピン偏極効果をもたらしている可能性が考えらえられる。また、本手法は、任意の電子物性を有するファンデルワールス層状物質への展開が可能であり、空間反転対称性の破れた凝縮系物質創製の“普遍的手法”となることが期待される。
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