2019年、質量の単位「キログラム」の定義が130年ぶりに改定された。従来の定義は、世界に一つしかない分銅「国際キログラム原器」を基準とするものであった。一方、新たな定義は普遍的な物理定数「プランク定数」にもとづく。キッブル天びんは、このキログラムの定義改定をトリガーとして開発が進んでいる新しい質量測定方法である。この方法では、試料に作用する重力を電磁力と釣り合わせる。その電磁力をプランク定数を基準とする電気量(電圧、電気容量)標準にもとづき測定する。これによって、キログラムの定義にトレーサブルな形で試料質量を測定することができる。ただし、そのサイズは非常に大きく、通常の実験室全体を占有してしまう。そこで本研究では、卓上サイズのキッブル天びんを実現するための測定原理の開発を試みた。 キッブル天びんによる質量測定は「力モード」と「速度モード」の二つのモードからなる。卓上サイズのキッブル天びんを実現するために、これら二つのモードを従来の方法と比較して非常に小さなスペースで実現する新しい測定原理を考案した。この測定原理の健全性を確認するために、キッブルバランス用レーザー干渉測長装置、ファンクションジェネレーター、デジタルオシロスコープ、レーザー干渉測長装置制御用PCなどからなるモックアップを作成した。モックアップによって、測定原理の健全性を一定のレベルで確認することができた。今後は、本成果を学会発表および研究論文の形で発信していく。
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