研究課題/領域番号 |
21K18906
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
田中 功 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40155114)
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研究分担者 |
金村 聖志 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (30169552)
丸山 祐樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10782469)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 単結晶リチウムイオン電池 / 層状酸化物 / LiCoO2単結晶 / 電極現象 |
研究実績の概要 |
コバルト酸リチウムLiCoO2の特徴であるLi+イオン伝導層とCoO2電子伝導層が積層した構造に着目して、LiCoO2単結晶を用いてリチウムイオン電池の正極としての真の電極現象や電極界面現象を結晶方位および異方性の面から解明する。さらに、LiCoO2単結晶を用いた究極の高配向性な単結晶リチウムイオン電池を開発することを目的としている。 令和3年度は、Zr置換LiCoO2およびタンタル酸ランタンリチウムLa(1-x)/3LixTaO3 (LLTa)のバルク単結晶について結晶育成条件の最適化および育成結晶のイオン伝導度異方性の評価を行った。 Zr4+を置換させたLiCo1-xZrxO2 (x=0.005)において、TSFZ法により直径約6 mm、長さ45 mmで金属光沢のある黒色単結晶の育成に成功した。育成結晶中にはわずかに(Co, Zr)-Oが異相として析出していたが、Zr置換によってイオン伝導度が約2倍高くなることが明らかになった。また、室温においてa軸とc軸方向のイオン伝導度はそれぞれ4.0E-6、2.4E-8 S/cmであり、約200もの大きな異方性を明らかにした。 タンタル酸ランタンリチウムLa(1-x)/3LixTaO3 (LLTaO)においては、LLTaO(x=0.18)原料に対して8mol%LiTa3O8不足な溶媒を用いてTSFZ法により直径約5mm、長さ30 mmで透明な単結晶を育成することに成功した。育成単結晶の室温において[110]と[001]のイオン伝導度は、それぞれ2.8E-5、1.8E-5 S/cmであり、イオン伝導度の異方性が約1.6であることを明らかにした。また、育成結晶のイオン伝導度は、Li濃度が0.08と低いにもかかわらず、LLTaO焼結体(x=0.18)のイオン伝導度5.3E-6 S/cmより約5倍も大きいことが明らかになった。 これらの単結晶が得られたことから、これらの育成単結晶を用いて、セルの作製や単結晶膜作製を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無添加および Zr置換LiCoO2単結晶をTSFZ法により育成することに成功しており、またそれらのイオン伝導度の大きな異方性や高伝導化を明らかにした。リチウムイオン電池の正極としての真の電極現象や電極界面現象を解明するため、現在、それらの単結晶を用いてセルを作製し、電気化学特性の異方性について検討しており、研究目的の達成に向けて順調に進展している。 単結晶リチウム電池の開発においては、LiCoO2単結晶を基板としてフラックス法によりLi層状酸化物固体電解質単結晶膜の作製を検討している。また、LiCoO2の融点がLi層状酸化物固体電解質の融点に比べて低いことから、Li層状酸化物固体電解質La(1-x)/3LixTaO3単結晶を育成して、その単結晶上へのLiCoO2単結晶膜の作製についても検討しているところであり、研究目的の達成に向けて概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究目的を達成するために、1)元素置換LiCoO2単結晶の育成、2) LiCoO2単結晶を用いた電極現象および電極界面現象の解明、3) LiCoO2単結晶を用いた単結晶リチウム電池の試作を行う。 元素置換LiCoO2単結晶の育成に関しては、令和3年度の成果を基に、セル作製用にZr4+置換LiCoO2単結晶を育成するほか、Nb5+を置換したLiCoO2単結晶の育成に取り組みイオン伝導度のNb置換効果を明らかにする。 LiCoO2単結晶を用いた電極現象および電極界面現象の解明に関しては、無添加およびZr添加LiCoO2育成結晶を用いて、液体やゲルの電解質でセルを作製して電極現象や電力界面現象を明らかにする。引き続き、固体電解質を使って全固体電池を試作して単結晶の効果を明らかにする。 LiCoO2単結晶を用いた単結晶リチウム電池の試作に関しては、LiCoO2単結晶基板上への層状酸化物固体電解質単結晶膜およびLa(1-x)/3LixTaO3 単結晶上へのLiCoO2単結晶膜をフラックス法や液相エピタキシャル法により作製する。そして、作製単結晶膜を用いてセルを試作して、特性評価及び電極界面現象を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該使用額は投稿論文原稿の校閲経費に充てる予定であったが、原稿作成が当初の予定より遅れて当該年度内の納期に間に合わないために、翌年度に繰り越した。 投稿論文原稿は、5月頃には完成する予定であり、当該繰越額をその校閲経費に充てる計画である。
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