一般的にガラスは割れやすい材料であるとされている。しかし、ガラスの理論強度は数GPaと高く鋼にも匹敵するが、実際は実用されている材料では1/100程度になる。この原因は表面に鋭いキズ(クラック)が存在するとそこに応力が集中し、小さなクラックを起点としてさらにクラックが広がるためである。そのため、ビッカーズ試験によってクラックの発生圧力と組成の関係を調べるなど、古くから研究が進んできた。本提案では、欠陥や物理的な応力によるクラック(割れ)の破壊現象からの自己修復可能な結晶材料及びガラス材料の開発を目的として、クラックの回復現象の再現実験を複数回実施し、再現性を確認した。その際、湿度、温度の違いによる現象発現の差異を試しており、各相関を確認した。回復しないクラックも発生しており、回復するクラックとの差異を確認する必要がある。回復した箇所に再度の応力負荷をかけることにより、一部分に回復前と同様のクラックが発生していることを確認している。このことから、完全な回復が発生しているとは言い難いが、歪み測定などによって、定量的に調査する必要がある。そのため、光弾性測定による歪み測定を実施し、クラックの発生前と発生から回復した後で比較した。クラックの発生により、ガラス内の応力変化が見られたが、クラックからの光散乱が大きく、詳細な解析までに至らなかった。また、次年度へ向けて、レーザー干渉計測のためのガラスサンプルの作成を実施した。
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