研究課題/領域番号 |
21K18910
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今西 正幸 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00795487)
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研究分担者 |
富樫 理恵 上智大学, 理工学部, 助教 (50444112)
宇佐美 茂佳 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30897947)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | OVPE / 酸化ガリウム / 高純度 |
研究実績の概要 |
本件研究では、次世代パワー半導体として注目されているβ相酸化ガリウム(Ga2O3)において課題とされているエピタキシャル結晶成長技術をoxide vapor phase epitaxy (OVPE)法により実現し、高耐圧ショットキーバリアダイオード(SBD)を作製することを目的としている。令和3年度の研究進捗状況について、以下に課題別に纏めている。 1.結晶成長技術の確立:予定通り、熱力学計算(富樫担当)を用いて、気相中及び種結晶上における結晶成長駆動力を予測し、多結晶が生じにくい原料供給系や成長温度、ガス条件を検討した。従来のGaNの結晶成長条件では水素濃度が高く、成長条件を100℃低い1100℃に設定したにも関わらず、酸化ガリウム結晶を得ることができなかった。そこで、1/100程度まで水素濃度を低減した結果、サファイア上にβ酸化ガリウム結晶を得ることに成功した。(010)、(001)酸化ガリウム基板上への成長も試みた結果、数μm~20μm程度の酸化ガリウム結晶膜が得えられた。 Ga2O3結晶成長に適した原料供給系を確立するため、専用の装置としてヒーター用制御盤を導入した。当該装置はヒーター出力のロギングも可能であり、安定的にOVPE Ga2O3基板が生産可能になると期待できる。 2.結晶欠陥評価技術の確立及び電気特性評価:当初の予定通り、エッチングによる転位密度の同定に取り組んだ。KOH-NaOH融液を利用し、貫通転位上に数umのエッチピットが出現する条件を見出すことに成功した。SIMSによる結晶中の不純物分析を行った結果、塩素成分は検出下限以下であり、OVPE法ではハロゲン不純物は混入されないことが示された。 3.OVPE法で作製したGa2O3結晶上SBDの試作:デバイスの作製に向け、(001)酸化ガリウム基板裏面にEB蒸着装置を用い、オーミック電極を形成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述の通り、OVPE法により初めて酸化ガリウム膜の作製に成功した。成膜そのものは当初の予定通りであるが、その平坦性が第69回応用物理学会において高い評価を受けたのが予想以上の成果であった。また、当初OVPE法は多結晶が析出しやすい系であることから、数μm程度の薄膜成長しか実現できないと考えていたが、010面では20um程度の成長に成功した。これらの成果、多結晶を抑制可能な条件の探索が熱力学計算などにより円滑に進んだために実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、複数回の実験で平坦な酸化ガリウム結晶を作製することに成功したが、現状1um近い凹凸が残存している。ショットキーバリアダイオードを作製するためにはnmオーダーの平坦性が必要であり、今後平坦性の更なる向上を試みる。平坦性の向上のためには、ガスフロー条件の解析が必要であり、流体シミュレーションによる解析や実験的なガス条件検討を行う。 不純物濃度についても詳細に調査を行う。現状SUS成分やキャリアガスの窒素成分が検出されているため、フランジの温度上昇対策やキャリアガスの変更により改善に取り組む。 同時にショットキーバリアダイオード作製プロセスの開発にも取り組む。R4年度はショットキー電極を形成し、整流性が得られることを確認する。また、実際にOVPE法で作製した酸化ガリウム膜の電流―電圧特性の評価を行う。また、C-V測定により残留キャリア濃度の評価も行う。 酸化ガリウム専用結晶成長装置の立ち上げにも取り組む。フランジやガス配管を整備後、水蒸気以外の酸素系ガスを原料とした酸化ガリウム結晶成長に取り組む。
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