本研究では,作製したフォトニック結晶導波路素子のランダム性に起因する光局在の波長依存性が強いことを利用して,分光器を実現する.光局在の波長局在モードはQ値で表現すれば10の5乗のオーダであるので,数10pm入力波長が異なると,異なるパタンが得られることから,その程度の波長分解能が期待できる.既知の入力波長のパタンのデータベースを構築し,そのデータベースを用いて未知の波長の入力を再構築することを目指している. 本年度は,これまでスペクトル再構築に用いてきた,焼き鈍し法や機械学習による手法を改め,逆行列法を用いて高速かつ直接的にスペクトルを用いる方法を開拓した.それによって,スペクトル再構築の大幅な高速化が実現した.単一波長の再構築は,多くの波長パタンを事前に校正データとして測定しておき,2次元マトリックスを作成しておくことからスタートする.そして,未知の波長が入力した際に,その逆行列を測定データに適用することでスペクトルを得る.本手法を実験的に実証し,この手法を用いて0.5nmを切るような波長分解能を得た. また,波長分解能に関しても検討を進め,それぞれの波長において波長をわずかにシフトさせたときにパタンがどの程度変化するかの相関関数を定義し,その相関関数を用いて波長毎の波長分解能を求めた.局在が強い波長,弱い波長が存在するものの,統計的にどの波長でも局在が生じる長さとすれば(サブmm),0.5 nmを切る波長分解能が動作波長全域において得られることを示した.
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