研究実績の概要 |
本挑戦的研究では、「特定のゲスト分子に対して電気的・磁気的信号を発信するゲスト応答型多孔性分子材料」の開発を目指し、酸化還元活性なゲスト分子に対してホスト-ゲスト間電子移動を起こす多孔性分子格子を創製することを目的としている。電荷移動型の錯体格子としては、これまで当研究室で研究展開されてきた水車型のルテニウム二核(II,II)錯体(電子ドナー;D)とTCNQ誘導体(電子アクセプター;A)からなるD2A型二次元層状材料をターゲットにした。昨年から始めた研究であり、昨年の実績報告書でも触れたが、一電子移動型D2A-MOF(ゲストフリー体はTN = 84 Kの反強磁性体)を開発し、ヨウ素を反応させることにより、常磁性体に変換する磁気相変換を見出した。本系は、加熱脱気することにより元のゲストフリー体に戻る(磁気相スイッチング)。本研究について本年論文として発表された。これは、ホストーゲスト間電子移動により磁気相変換を実現した初めての例であり、本研究者が提案した4つの磁気相変換機構のうちの1つである。本成果は、東北大学からプレスリリースを行った。 高活性なホスト格子D2A-MOFの開発を目指し、R基置換型2-hydroxypuridinate (R-hp)を架橋配位子とする様々なルテニウム二核(II,II)錯体を配位子置換基を変えて合成することにより、新たな電子ドナーの開発を行った。Hp系の[Ru2]錯体は、カルボン酸架橋水車型錯体と比べて非常に酸化されやすい(ルテニウム二核(II,III)錯体を作りやすい、すなわち高い電子ドナー性をもつ)。今回、5位にニトロ基を付した(2,2)配位形態が比較的Ru二核(II,II)錯体を安定化することが明らかとなった。新たな電子ドナーとして期待される。
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