研究課題/領域番号 |
21K18929
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菱川 明栄 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (50262100)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | キラル分子 / 円2色性 / 強レーザー場 / 光電子角度分布 / コインシデンス計測 |
研究実績の概要 |
超短パルス強レーザー場におけるキラル分子のレーザートンネル電子円2色性を観測に向けて,実験室系におけるトンネル電子の3次元運動量分布,および解離生成イオンとの運動量相関を計測するための電子ーイオンコインシデンス運動量計測系の整備を進めた。これを用いて,D-リモネンからの光電子の計測を行い,3次元運動量分布が円偏光レーザー場におけるトンネルイオン化で予想されるトーラス形状を示すことを確認した。また円2色性の観測に向けて光学系を検討し,右回り(RCP)および左回り(LCP)のいずれの回転方向においても高い円偏光度ε>=0.97をもつ円偏光超短パルスレーザー場の発生に成功した。
この光学系を用いて,CF4分子の解離性トンネルイオン化過程,CF4-> CF3+ + F + e-,について電子ーイオンコインシデンス計測を行った。生成イオンCF3+の運動量で定義した反跳座標系における光電子角度分布(RFPAD) は,レーザー電場がFからCに向いた場合に大きな強度をもつことが見出された。これは弱電場漸近理論(WFAT) に基づくHOMOおよびHOMO-1からのトンネルイオン化レートによる予想と定性的に一致した。一方,RFPADは偏光回転方向(RCP/LCP)に対して顕著な違いを示すことが見出され,強レーザー場における解離性イオン化においては非キラル分子も円2色性を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強レーザー場におけるキラル分子のトンネル電子円2色性を観測に向けて,電子ーイオンコインシデンス運動量計測系の整備が順調に進んでいる。また,強レーザー場における解離性イオン化においては非キラル分子も円2色性を示すことを明らかにするなど,分子のトンネルイオン化ダイナミクスの理解を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
超短パルス強レーザー場にトンネル電子円2色性を観測に向けて,左右円偏光を自動切替で計測するための制御系の構築を進める。分子ビーム源の設計・製作と合わせて,精密な円2色性の計測を実現しキラル分子の分子応答を明らかにする。これによって,強レーザー場円2色性計測による新しいキラリティ検出法の開拓に向けた,キラル分子のトンネルイオン化ダイナミクスの理解を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
分子ビーム源の設計変更に伴って,必要な物品のうちの一部の購入を次年度に遅らせる必要が生じたため。
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