研究課題/領域番号 |
21K18933
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水上 渉 大阪大学, 量子情報・量子生命研究センター, 准教授 (10732969)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 相対論的量子化学 / 機械学習波動関数 / 制限ボルツマンマシン / 量子インスパイアード |
研究実績の概要 |
近年発展の著しい量子情報の知見を導入・援用した量子「インスパイアード」アルゴリズ ムにより、相対論的量子化学のための電子状態理論の開発が本研究の目的である。研究方法としては、化学系の量子コンピューティングで使われる電子系から量子ビット系 への変換を軸として、ニューラルネットワークの高い表現能力を利用したニューラルネットワーク量子状態(NQS)を使うことと、量子情報で使われるスタビライザー状態の利用という2つを軸として進めている。初年度である2021年度は、ニューラルネット波動関数として制限ボルツマンマシンを用いた手法の相対論的量子化学への応用に取り組んだ。具体的には、4成分相対論と呼ばれる理論から出発し、これに負の電子状態を無視したNo-Pair近似を導入した第2量子化ハミルトニアンを量子ビット系に変換する方法を実装・開発した。近年の量子コンピュータに対するアルゴリズム開発の研究で、期待値測定に用いるハミルトニアンがフェルミオンの対称性を持っていれば、電子状態の記述のためのansatzにはスピン系を用いても性能はほとんど変化しないことがわかっている。この点に着目し、スピン系に対する制限ボルツマンマシンansatzを直接適用した。相対論的量子化学計算に対する制限ボルツマンマシン波動関数の初期実装は進んでいるものの、数値検証はこれからであり、その性能評価は次年度に持ち越すこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にNQSの実装を済ませることを計画しており、その段階はおおよそ完了している。若干の遅れはあるものの計画から大きな乖離がなく進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は初年度に開発した方法の数値検証をおこうなう。さらに、新しくスタビライザー状態の利用をはかる。スタビライザーの生成には、古典計算機で効率的に生成可能なClifford回路と呼ばれる量子回路を使う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が続いたことで旅費が生じなかったことと、開発した手法の数値検証がまだであり、計算資源の確保の予算が生じなかったことが理由である。前者については、緩和の兆しがあり、後者については次年度実施するため時期は少し後ろ倒しになっているものの予定どおり使用できると考えている。
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