研究課題
単一分子の蛍光像の重心を数nmの分解能で決定し超解像を得る手法は、静的超解像画像のみならず単一分子の動的拡散挙動測定も可能であることから高分子固体中のslow dynamicsの解明等へも応用されている。この方法では、蛍光ONとOFF状態をスイッチできる分子に対して外部光で状態間制御を行い、希薄な蛍光ON状態分子濃度を保つ必要がある。また非常に強い励起光強度が必用であり、色素の光劣化も迅速に進行する。これらの結果1分子あたりの測定時間はせいぜい数分程度で、モニター可能な空間も限定されるため、長時間、広空間域の知見を得ることは困難であった。しかし最近、我々は可視単一波長照射下で、分子レベルで蛍光ON-OFF状態制御可能な分子からなるナノ粒子全体が、蛍光のON-OFF挙動を示すことを見出した。10 nm程度の有機ナノ粒子には約104個以上の分子が存在し、また光吸収確率の増大により非常に弱い照射光強度で測定可能であり、高耐久性が達成され長時間測定を可能とすると考えられる。本研究では、この粒子全体のON-OFF機構解明を目的として、単一粒子の発光挙動に対する励起光強度(ON-OFF時間間隔の測定)、時間分解蛍光、溶液中の吸収、発光スペクトルによる分子レベルの会合挙動の測定等を行った。その結果、Urbach tailの光吸収で誘起される閉環反応(O→C)によりON状態分子(C)が隣接して生成する3-4量体程度の会合体が著しく弱蛍光性となること、ナノ集合体では単量体(C)からエネルギーレベルの低い会合体に効率的に励起移動が起こり粒子全体の蛍光がOFFとなること、これらの多量体の中で開環反応が進行し(たとえばC-C-C からC-O-C)単量体となった場合、励起トラップ過程が進行せず粒子全体からの蛍光がONになることにより、粒子全体のON-OFFブリンキングが進行することが判明した。
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