研究課題/領域番号 |
21K18936
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大谷 亮 九州大学, 理学研究院, 准教授 (30733729)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 極性 / シアノ錯体 / イオン伝導 |
研究実績の概要 |
極性プロトン伝導体K2MnN(CN)4.H2Oの単結晶試料を用いて、強誘電特性の評価を行った。湿度80%において1kV/cmの印可電圧で測定したところ、32mC/cm2という巨大な分極値が確認された。これは、結晶構造に基づいて計算された10uC/cm2という値とは大きく異なっており、結晶格子を超えたイオンの移動に起因した分極現象であると考えられる。すなわち、外部電場により移動したプロトンが極性骨格にトラップされることで、電場を切っても分極状態が維持されることによるものであると考察した。また興味深いことに、粉末ペレット試料においても同様の強誘電ヒステリシスが得られた。分極値は2桁程度の減少が確認されたが、既存の強誘電材料と比較しても極めて大きな分極値であった。また温度上昇により分極値の増加が観測され、イオン運動性の分極現象への寄与が示唆された。 一方で、湿度0%においては強誘電ヒステリシスは観測されず、結晶構造解析から明らかとなっている無極性構造体と一致した結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目的としていた極性結晶K2MnN(CN)4.H2Oの示すプロトン整流特性に関する物性解析が進んでいるだけではなく、全く新しい強誘電特性を見出したことから判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、類縁体である極性結晶Li2MnN(CN)4.3H2Oのイオン電導特性と強誘電性の評価を進める。特に、PUND法を用いた強誘電評価により真の分極値を求めると同時に、イオンの緩和速度を評価する。また、K2MnN(CN)4.H2Oとの比較により、イオン伝導性と強誘電性との相関関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の試料調整が非常にうまく進んだ結果、測定評価を中心とした実験になったため、合成消耗品等の経費仕様が抑えられ、次年度使用額が生じた。測定評価結果をもとに更なる合成開拓を行うべく、繰越分も含めて適切に経費執行を行う。
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