研究課題/領域番号 |
21K18940
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
今井 喜胤 近畿大学, 理工学部, 准教授 (80388496)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 円偏光発光 / 磁気円偏光発光 / 円偏光電界発光 / 電場応答円偏光発光 / CPL / MCPL / CPEL / ECPL |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アキラルあるいは光学不活性な有機発光体からフレミングの左手則に従って外部電場による円偏光発光(CPL)の発生と左右性の制御が可能であることを実証することにある。近年、キラル(光学活性)な有機発光体を用いた円偏光発光ダイオード(CP-OLED)の研究が活発に行われているものの、有機化学の常識からすれば、左右一組のCP-OLEDを実現するにはR・S対のCPL分子材料とその原料を必要とする。 そこで、化学的不斉源を持たないアキラルあるいは光学不活性な発光体から、外部電場、外部磁場によりCPL発光が可能になれば、不斉合成や光学分割などの操作が不要になり、CPL材料設計の自由度が格段に広がる。工業的視点からも、革新的手法に繋がる。 本研究では、まず、ラセミ体の光学的に不活性なルテニウム発光体に外部磁場を印加することにより磁気円偏光発光(MCPL)の発現について検討した。溶液中、PLおよびMCPLを測定したところ、ラセミ体であるにもかかわらず、明確なモノマーPLおよびMCPLを観測することに成功した。興味深いことに、同一のルテニウム発光体において外部磁場を反転させたところ、外部磁場の方向がS→NとN→Sでは、MCPLの符号を反転させることに成功した。この成果は、今後の電気化学発光(ECL)デバイスの開発につながる成果と期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学発光(ECL)デバイスの発光源である、ラセミ体の光学的に不活性なルテニウム発光体に外部磁場を印加することにより磁気円偏光発光(MCPL)の発現に成功した。 脱気アセトニトリル溶液中、PLおよびMCPLを測定したところ、ラセミ体であるにもかかわらず、明確なモノマーPLおよびMCPLを観測することに成功した。興味深いことに、同一のルテニウム発光体において、外部磁場を反転させたところ、外部磁場の方向がS→NとN→Sでは、MCPLの符号も同時に反転させることに成功した。この成果は、今後の電気化学発光(ECL)デバイスの開発につながる成果と期待される。 さらに、アキラルなペロブスカイト量子ドット発光体からの磁気円偏光発光(MCPL)にも成功した。Pb含有アキラルなペロブスカイト量子ドットを用いて、トルエン溶液中、外部磁場を印加し光励起したところ、明確なMCPLの発出に成功した。興味深いことに、同一のペロブスカイト量子ドットにおいて、外部磁場の方向がS→NとN→Sでは、MCPLの符号を反転させることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、アキラルなRu発光体、アキラルなペロブスカイト量子ドット発光体に外部磁場を印加することにより、磁気円偏光発光(MCPL)の発現に成功している。またこの際、外部磁場の方向をS→N、N→Sと反転させることにより、MCPLの符号を制御することに成功している。そこで今後、これらアキラルなRu発光体、ペロブスカイト発光体をデバイスの発光層に組み込むことにより、電気化学発光(ECL)デバイスの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの基盤研究成果によりターゲット発光体が準備・合成されていた点、また、おおむね順調に研究成果が得られたため、物品費などの出費が抑えられた。また、コロナ渦であったため、学会発表参加旅費などの支出がなかった。 次年度は、デバイス作製に入るため、その物品費に支出をあてるとともに、学会発表も積極的に行う予定である。
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