研究実績の概要 |
電子線描画法等微細加工技術によりSiウエハ上にギャップ幅10 nmのナノギャップ電極を作製し,電極間に超分子ワイヤを配線した.プラグ分子には,双極子モーメントを持つ分子骨格を組み込んだ.そして,電極間に電圧を加えた状態で分子配線合成を実施し,分子の配向を電場方向に向かせることで配列・配向制御超分子デバイスを創製した.なお分子配線時には,高速微小電流計測技術を用いて,逐次的に分子が電極間に架橋する過程を観測し,配線される分子の数と密度を明らかとした.同手法により,ダイオード分子の骨格を持つ超分子デバイスを作製し,その整流特性から分子ワイヤの配向度を評価した.さらに,赤外分光法による分析を実施し,赤外スペクトルから超分子ワイヤの配向角度を確認した.以上の実験を通して,分子の数・密度・配向が制御された超分子デバイスを創製に成功した.MCBJ法を用いた1分子計測技術 [Nat. Nanotechnol., 2010, 5, 286;Nat. Commun., 2010, 1, 138;Nat. Nanotechnol., 2014, 9, 835]により,種々の芳香族化合物雰囲気中で超分子素子の1分子電気伝導度を測定し,その拡張π共役部位における芳香族分子の吸脱着プロセスに伴う電気伝導度変化を記録する.MC-BJにはマイクロヒータを搭載し(Sci. Rep. 2015, 5, 11519),バイアス電圧と温度をパラメータとして,計測を実施した.これにより,芳香族化合物の1分子吸脱着ダイナミクスに対する局所熱の影響を評価した.得られるデータを用いて,機械学習による芳香族化合物の1分子識別精度を導出した。識別精度を分子設計と測定条件にフィーバックさせ,超分子素子の改良を行った。以上より,様々な芳香族化合物の1分子検出に適した分子認識部位の設計と超分子素子の最適動作条件を明らかにした.
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