研究課題/領域番号 |
21K18950
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大森 建 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50282819)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | シクロファン / 面性不斉 / インターロック分子 / ロタキサン / カテナン |
研究実績の概要 |
本年度の研究においては、共有結合形成を基盤とした堅牢かつ柔軟なインターロック分子の合成経路を開拓するため、まずその基本となる「in-cyclophane」構造(官能基が環の内側を向いたシクロファン構造)のプラットホームとして、アントラセン誘導体の合成経路の開拓を行った。 はじめに1,5-ジブロモアントラセン酸誘導体と、9-bromonon-1-eneのヒドロホウ素化により調製したボランを用いた鈴木ー宮浦カップリング反応を行い対応するジエン誘導体を得た後、第一世代および第二世代のGrubbs触媒を用いたring closing olefin metathesis(RCM)による架橋鎖の構築を試みたが、不首尾に終わった。 種々検討の結果、1,5-ジブロモアントラセン誘導体とアルキン(7-octyn-1-ol)を用いた薗頭反応にて調製したビスアルキニルアントラセン誘導体が目的とするシクロファン単位の合成前駆体となることを見出した。具体的には、シス選択的な炭素-炭素三重結合の半還元およびアルコール部の酸化、Wittig反応および、続く第一世代のGrubbs触媒を用いたring closing olefin metathesis(RCM)反応により架橋鎖を構築し、目的とするアントラセノファン構造の簡便な合成経路の開拓に成功した。 さらに本研究においては合成したアントラセノファン誘導体の反応性を調べた。まず、TCNE(テトラシアノエチレン)とのDielsーAlder反応および逆DielsーAlder反応を試みたところ、期待した可逆的付加環化反応性を示すことが分った。さらに、アントラセノファン誘導体の二量化反応および逆二量化反応を光および熱的条件下で行ったところ、優れた可逆性が示された。また架橋鎖導入の検討の途上、スルフェートアニオンのオキシラン環に対する予期せぬ反応性を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するためには、その基盤となるシクロファン単位の合成的供給法の確立が必要不可欠である。本年度の検討により、その目的は達成できたと考えている。また、合成したアントラセノファン誘導体の反応性や化学的安定性に関する知見も順調に得られており、今後のインターロック分子の設計・合成へ向けて、検討事項の主軸をスムースに移行できる状態となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず合成の基盤となるアントラセノファン誘導体をグラムスケールで調製する。さらにその後の課題となるインターロック分子の合成に向けた検討を開始する。具体的には、調製したアントラセノファン誘導体に対し、フマル酸およびマレイン酸誘導体をDiels-Alder反応により連結し、プレシクロファン誘導体を得た後、それを用いて大環状架橋鎖の構築を検討する。そしてそれに成果が得られた場合には、鍵となる逆Diels-Alder反応を行い、連結したアルケン単位とアントラセノファン単位の切断を行い、目的とするロタキサンおよびカテナン構造の構築を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度(R3年度)に購入を検討していた試薬の価格が高騰したため、研究の実施計画を一部見直し、必要な試薬を研究室にて自前で調製する方針に切り換えた。そのために必要な試薬やそれに要する時間を見積り直し、一部の検討事項については次年度以降に先送りすることとなり、それに関連する予算の執行を部分的に先送りした。これらについては次年度に実施予定である。
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