研究課題/領域番号 |
21K18953
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
古山 渓行 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (30584528)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 近赤外光 / フタロシアニン / 透過性 / カラーレジスト材料 |
研究実績の概要 |
近赤外光(700~1000 nm程度の光)を強く吸収する一方、可視光(400~700 nm)とほとんど相互作用しない見た目はほとんど透明な近赤外色素の開発することが目的である。候補化合物としてフタロシアニン誘導体または代表者が独自に開発したボール型金属錯体を想定しているが、今年度はフタロシアニン誘導体に絞った検討を行った。理論計算の結果、周辺α位に窒素を有するフタロシアニン誘導体において、Q帯の顕著な長波長化を見積もることができ、結果として可視光の吸収帯が低下することで選択性が増すことが期待された。一方でこのような誘導体について過去に合成例が知られていなかったため、合成法の検討を初めに行った。結果、3,6-ジヨードフタロニトリルとアニリン誘導体とのBuchwald-Hartwigカップリング反応にて様々な窒素官能基を導入した前駆体の合成に成功し、これらに対し一般的なフタロシアニン合成法を適用することで目的のフタロシアニン誘導体を合成できた。 各種フタロシアニンの溶液状態におけるQ帯は900~1000 nm付近に位置し、期待通りの近赤外特性を満たすことが分かった。また、可視領域の光吸収が小さいことも確認できた。そこで、実際のカラーレジスト材料に近い状態として、PMMAに色素を分散させた膜を作製し、分光特性を検討した。結果、特にある種の金属錯体について目視での明らかな透明性および、CIE色空間および吸収スペクトルの面積を利用した定量的な評価による透明性の上昇を確認することができ、当初の分子デザインの確らしさを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フタロシアニン系を用い、理論計算に基づき合理的に設計した化合物群において、当初想定した近赤外光選択性を得ることができたことから、申請時に提案したコンセプトの実証ができたものと考えている。これらの新規材料の合成にあたっては新たな合成ルートの開発が必要となったが、そちらにおいても十分な一定の知見が得られたことから、系統的な合成法の開発により更なる高性能化が期待できる。以上の結果については新規材料であるため、特許出願を行った。 一方で、元々もう一つのターゲットとして提案したボール型金属錯体を用いたデザインについては、方針はある程度確立しているものの、実際の合成および検討にはあまり着手できていない。2年次はこちらを集中的に進め、1年次に得られた結果と比較していくことで、更なる発展が期待できる。また、熱安定性の向上についても検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
フタロシアニン系については継続的に検討を進め、ボール型金属錯体についても材料の探索の幅を広げて検討を行う。フタロシアニン系については、熱安定性および選択性に関与することが分かりつつある中心金属効果を中心に検討を進め、カラーレジスト材料としての有用性を示すと同時に論文発表へ向けた取りまとめを進める。ボール型金属錯体については、現状の理論計算結果および既存の化合物のデータ解析から、ある種の置換基の導入が選択性の向上に有効であることが分かっているため、これらの合成を優先的に行うこととする。光特性および熱特性について系統的に調べることで、確立した指針が得られるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、次年度の研究遂行に使用する予定である。 (使用計画) 引き続き、次年度以降の研究遂行のため適切に使用する。
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