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2022 年度 実施状況報告書

ヒトの細胞膜と真菌の細胞膜を区別する膜作用分子を基盤とした新奇抗真菌剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K18963
研究機関九州大学

研究代表者

大石 徹  九州大学, 理学研究院, 教授 (90241520)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワードアンフィジノール3 / 抗真菌剤 / 化学合成 / 構造活性相関 / 膜作用分子
研究実績の概要

感染症は人類にとって大きな脅威である。真菌はヒトと同じ真核生物であるため,優れた選択毒性を発揮できる薬物が少なく,抗真菌薬の開発は立ち遅れている。さらに,耐性菌の出現は社会問題となっており,より効果的な抗真菌剤の開発が求められている。アンフィジノール3(AM3)は,強い抗真菌活性を示す天然物である。細胞膜に直接作用して抗真菌活性を発現することが示唆されており,耐性菌が出現しにくい抗真菌薬のリード化合物として期待される。しかし,天然からの供給は難しく,また,副作用として溶血活性を持つことが問題である。そこで本研究では,AM3アナログ分子をリード化合物とした合成化学的アプローチから,耐性菌が出現しにくく選択毒性の高い抗真菌剤の開発を目的として研究を行った。令和4年度は,人工アナログ分子の設計・合成・生物活性評価を行った。当研究室では,鈴木-宮浦カップリング反応とJulia-Kocienskiオレフィン化反応を利用したアンフィジノール3の全合成を達成しているので,この方法論を人工アナログ分子の合成に応用した。炭素数を20個削減した簡略化人工アナログ分子を設計し,ポリオール部分,ビスTHP環部,およびポリエン部分の3つのセグメントから収束的に合成した結果,天然物と同等な抗真菌活性を示し,天然物よりも溶血活性が低下することが明らかとなった。そこで,さらに炭素数が1個短い人工アナログ分子を設計・合成し,その生物活性を評価した結果,抗真菌活性も溶血活性も低下することが明らかとなった。すなわち,簡略化人工アナログ分子の場合,20炭素までは削減可能であるが,21炭素以降は抗真菌活性の発現において重要であることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究者は,ポリオール部分,ビスTHP環部,およびポリエン部分に相当する各セグメントから,鈴木-宮浦カップリング反応およびJulia-Kocienskiオレフィン化反応を経由することでアンフィジノール3(AM3)の全合成,および短縮体アナログ分子(C21-C67部分)を既に達成しているので,この方法を用いた人工アナログ分子の合成と生物活性の評価を行った。人工アナログ分子において抗真菌活性を発現する必要最小限の分子長を明らかにするため,炭素数を21個削減したアナログ分子(C22-C67部分)を設計・合成した。生物活性を評価した結果,抗真菌活性および溶血活性を示さないという興味深い結果が得られた。すなわち,簡略化人工アナログ分子の場合,20炭素までは削減可能であるが,21炭素以降は抗真菌活性の発現において重要であることを明らかにすることができたため,概ね順調に研究が進展している。

今後の研究の推進方策

令和5年度は,引き続き簡略化人工アナログ分子を合成する。令和4年度の結果から,簡略化人工アナログ分子の場合,20炭素までは削減可能であるが,21炭素以降は抗真菌活性の発現において重要であることが明らかとなった。そこで,天然物に匹敵する抗真菌活性を有する炭素数を20個削減した簡略化人工アナログ分子(C21-C67部分)を基に,ポリエン部分に関してさらに詳細な構造活性相関研究を行う。すなわち,ポリオール部分とビスTHP環部を鈴木-宮浦カップリング反応によって連結した共通中間体から,ポリエン部分に関する様々な類縁体をJulia-Kocienskiオレフィン化反応を利用して発散的に合成し,抗真菌活性および溶血活性を評価する計画である。

次年度使用額が生じた理由

購入予定の試薬が当該年度の残額では購入できなかったため,翌年度分の助成金と合わせて購入する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 その他

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Total Synthesis and Structure-Activity Relationship Study of Amphidinol 32022

    • 著者名/発表者名
      Tohru Oishi
    • 学会等名
      International Congress on Pure & Applied Chemistry (ICPAC) 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考]

    • URL

      http://www.scc.kyushu-u.ac.jp/Seibutsuyuki/index.html

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公開日: 2023-12-25  

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