研究課題/領域番号 |
21K18967
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
森崎 泰弘 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (60332730)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 結び目理論 / 円偏光発光 / 環状構造 / 環状オリゴマー |
研究実績の概要 |
本年度は我々が開発したbis-(para)-pseudo-ortho- ならびにbis-(para)-pseudo-meta-四置換[2.2]パラシクロファン化合物をビルディングブロックとして用いて研究を行い以下の成果を得た。 ①パイ共役系からなるキラルな三葉結び目骨格を構築するため、bis-(para)-pseudo-ortho-四置換[2.2]パラシクロファンの擬オルト位にエチニル基とトリイソプロピルシリルアルキニル基をそれぞれ有する化合物を合成し、希薄条件においてジヨードベンゼンとクロスカップリングさせることでパイ電子系が3つ互い違いに積層した環状三量体の単離に成功した。シリル基を除去してortho-ヨード-トリメチルシリルエチニルベンゼンとをカップリングさせてパイ共役系を拡張し、三葉結び目構造構築へ残り二段階のところまで到達した。 ②上記の環状三量体を単離すると同時に、パイ電子系が2つ互い違いに積層した環状二量体を単離することにも成功した。シリル基の除去後、ジヨードトランとのクロスカップリングによって新規光学活性環状分子の合成に成功した。環を2回片巻きにひねったユニークな構造を有する分子である。キロプティカル特性を中心に物性評価を行い、良好な異方性で円偏光発光することを明らかにした。 ③Bis-(para)-pseudo-ortho- ならびにbis-(para)-pseudo-meta-四置換[2.2]パラシクロファンをビルディングブロックとして用い、パイ電子系が4つ積層した光学活性#型(ハッシュタグ型)環状四量体を合成することに成功した。パイ電子系の組み方によって、パラレル#型と編込み#型の2種類存在する。編込み#型環状四量体は大きなモル吸光係数、高い蛍光量子効率、高い円偏光発光異方性を併せ持った優れた円偏光発光性分子であることを実験的かつ理論的に実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三葉結び目骨格構築にせまる前駆体まで合成することができた。 さらに、本研究では三葉結び目骨格構築のための前駆体副生成物を単離同定し、これを利用することで環を片方向に2回ひねった全く新しいタイプの光学活性分子を合成することができた。 その他、三葉結び目骨格構築のためのビルディングブロックと、五葉結び目骨格の構築のためのビルディングブロックを組み合わせ、従前にない#型の構造を有する2種類の新規光学活性環状四量体を合成した。その円偏光発光特性を調査したところ、高輝度かつ高異方性にて円偏光発光することが明らかになり、その構造と物性の相関を理論的にも明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も目的とする三葉結び目骨格構築を目指す。2022年度に合成した骨格の脱保護、ならびにpara-ジヨードトランとのクロスカップリング反応によって環化し、三葉結び目の構築を目指す。この手法でうまく三葉結び目が構築できない場合、クロスカップリングではなくアリールハライド同士の酸化的カップリングによる環化・アルキン-アルキン酸化カップリングによる環化・アルキン閉環メタセシスによる環化など多方面から環化反応を試みたい。また、五葉結び目骨格の構築に向けbis-(para)-pseudo-meta-四置換[2.2]パラシクロファンの官能基化を行っていく。 これまでに3つのbis-(para)-pseudo-ortho-四置換[2.2]パラシクロファン骨格を有する、トライアングル型パイ電子系積層環状三量体を合成したが、2023年度はbis-(para)-pseudo-ortho-四置換[2.2]パラシクロファン骨格を一つだけ用いてトライアングル型構造を構築し、パイ共役系がとぎれることなく拡張した分子を合成する予定である。単一の共役系を環状にすることで、発光過程の電気遷移双極子モーメントの伸長を抑制することができると予測され、円偏光発光の異方性が向上することを理論的に明らかにした。三葉ならびに五葉結び目も単一の共役系からなる環状構造であり、本研究の一貫として単一の共役系からなるトライアングル型分子の物性を実験的に明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでは、キラルビルディングブロックを合成するためのキラル補助基を脱保護した後、それらを廃棄していたが、高額試薬のため回収再利用を検討して実現することができた。また、カラムクロマトグラフィーの際の溶媒も回収再利用することで物品費抑制効果が表れた結果である。 国内外の学会が対面開催となり、国内学会1件ならびに国際学会にて2件の招待講演を予定していることから、物品費に加え旅費に充当し使用する。
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